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背の高い女性の背中から、ひょっこりと小さな顔が覗いて、隆雄に笑いかけた。
「あ、お兄ちゃん、お帰り~」
「さくら・・・・・・」
「ちょっと、なんで私は無視なのよ!」
さくらの頭をくりくりと撫で回しながら、長身の女性が剣呑な目付きで睨んできた。
だって怖いから、とは言えない。
「お兄ちゃん、どうしたの? 珍しいね。」
「さくら、おまえもか・・・」
「百合ねえ・・・ごめん・・・」
がっくりと項垂れる百合が何とも哀れで、隆雄が謝る。
「あんたに謝られるとムカつくわ!!」
きっと睨まれた。
何とも割に合わない。
「卒業アルバム?」
さくらが近づいてきて、手元を覗き込んできた。
頷くと、にっこり笑って隣に腰掛ける。
「あ、お兄ちゃん発見。変わらないね~」
「さくら、サダオなんて放って置きなさいよ。根暗が移る!」
「・・・サダオ・・・」
「あんた、また最近カットしに来ないから顔見えないじゃない。今から切っちゃるから風呂場に行くよ!」
美容師の百合は、伸ばしっぱなしの隆雄の髪形が許せないらしく、ちょこちょこ呼び出してはカットする。
正直、出かけるのは面倒なのだが、行かないと後が怖い。
「あ」
思ったよりも大きな声が出た。
少しだけ驚いたような顔で、二人が隆雄を見つめる。
「・・・あの、何でいるの? 平日なのに」
もごもごと疑問を口にすると、さくらがプッと噴出した。
百合もあきれたようにため息をつく。
「??」
「サダオ、日本にはな、お盆は休むという習慣があるんだよ。あ、だからあんたも井戸から出てきたのか」
「・・・・・・ああ。」
そうか。
そう言えば、そうだ。
曜日にばかり気をとられていて日付の感覚がなかった。
「今年は本家の大叔母さんが亡くなってるから、初盆で皆で顔を出してきたのよ。あ、あんたはどうせ来ないだろうから呼ばなかったみたいだけど。」
確かに、葬式があった。
あれは今年だったのか。
何となくおぼろげな記憶が頭の中で再生される。
「だから、制服・・・」
さくらが高校の制服姿だったのを、学校帰りなのだろうと解釈していたが、違ったようだ。
「百合ねえも、黒い」
今更ながら、百合がフォーマルを着込んでいることに気が付いた。
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