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「自分と同じ顔がぼっさぼさなんて耐えられないのよね。」
風呂場のドアを開きながら振り返った百合が綺麗な形の眉を歪めた。
切れ長の目に、薄い眉。
薄い唇に、特徴のない鼻梁。
隆雄とそっくりの土台を持つ百合は、神業のようなメイク術で美人の称号を得ている。
つまりはチチオヤにも似ている事になるんだが。
てきぱきと準備を済ませた百合に促されるまま、風呂場に用意された椅子に座る。
百合のMy鋏が音を立て、その度に黒い房が床に散らばっていく。
ぼんやりしている間に、剃刀まで当てられてしまった。
全体的にすーすーと風通りが良くなった。
風邪をひきそうだ。
「あによ。文句あるの?」
「・・・ない」
低い声を出す姉に逆らうつもりはない。
「うん、まあ、こんなもんでしょ」
百合が満足げに頷きながらにっこり笑って背中を叩いた。
地味に痛いぞ、馬鹿力。
「あんたさ・・・何かあった?」
かなり短くなった頼りない前髪シールドを指先で弄んでいると、道具を片付けていた百合の真面目な声音が風呂場に響いた。
「ない」
「うそだね」
「・・・・・・ないし」
「即答とか、わざとらしいから。双子だもの、分かるわよ」
「・・・双子じゃないじゃん」
そう、双子じゃない。
確かに、百合とは瓜二つで、良く双子に間違われる。
が、百合が二歳年上の姉であるのは間違いない。
そろそろサバを読みたくなる年頃なのか。
そんな事を考えているのがバレたのか、膝を蹴られた。
「まあ、いいけど。何かあるなら話聞いてやろうかと思っただけだから」
確かに、何もない事はないのだ。
けれど。
どう説明をしたものか。
実姉に・・・しかも・・・隠してなおにじみ出る貴腐人の香り漂う彼女に、むざむざネタを提供したとして、良い事など何もないと思われる。
「あ・・・百合ねえ・・・俺ん家知ってる?」
「は? あんたん家? 知る訳ないじゃん、教えてくれない癖に何言ってんの」
1年ほど前に引越しした際、隆雄は家族に引越し先を知らせなかった。
前のアパートには、暫く帰省しないとチチオヤが押しかけてくるという状況が頻発していた。
そもそも、それへの対応策としての引越しだった訳で。
だから、誰にも知らせていない。
誰も知るわけがない。
なのに、高校の同窓生と自称するあいつは、隆雄を訪ねてきた。
同級生ってのが本当だったとして、どうやって知った?
とりあえず、引っかかるのはそこか。
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