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4.脇役的回想-1
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しまった。
と思ったときにはすでに遅かった。
向こうから歩いてくる大柄な男の顔には笑顔が広がり、真っ直ぐに俊明に向かって歩いてくる。
図書館に本を返すだけの用事に、今日という日を選んでしまった事を激しく後悔した。
すぐにでも逃げ出したいのを堪えて、その場で待つ時間が長く感じる。
「よっ! 渥美! 暇だな?」
「おはようございます」
のっしのっしと大股で歩く姿は熊そのものな細井先輩は、傍に来ると肩に手をまわしてきた。
逃がす気はないと、態度と顔で言っている。
「俺、金ナイっす」
「なんだ、俺はまだ何も言ってないぞ?」
はっはっはと笑う細井先輩の用件なら聞かなくても分かる。
合コンの誘いだ。
ラグビーのオフシーズンは短い。
毎日のように飲み会と称した合コンに駆り出された一年生の春休み。
その経験を糧に今年は何とか3月を逃げ切ろうと思っていたのだが、捕まってしまった。
肉体自慢のラグビー部員の女性受けは正直微妙だ。
一部の筋肉フェチなんかには好評だが、厳つい体育会系の集団に引かれる事も多い。
そこで、比較的整った顔立ちの俊明が引っ張り出される。
迷惑だ。
別に女の子が嫌いな訳じゃない。
合コンにお金を落とすくらいなら、来月発売のゲームにそれを充てたいと思う。
それだけだ。
ふむ。
と顎に手を当てて考える素振りをする細井先輩だが、諦める気がないのは、腕の力が強くなったことで分かってしまう。
「よし!」
何がよしなんだとは言えない。
もう一年早く生まれたかったと、俊明は心の中で溜息をついた。
「俺がバイトを紹介してやる。だから、今日は俺に付き合え」
「・・・うす」
意味が分からない。
なんなんだ、その展開。
頷くしか出来ない己の立場が恨めしい。
結局その日は、財布から8000円が消えていくのを心の中で泣いて耐えた。
一番可愛い子をお持ち帰りしたと、後日先輩に殴られたが、その位は仕返しさせて貰わないと割に合わないだろう。
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