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そのマンションは、大学近くの繁華街を抜けた所にあった。
オフィスビルではなく、普通のマンションだ。
普通・・・ではなくかなり高級か。
俊明はジーンズのポケットから取り出した皺くちゃの地図に目を落とした。
地図は確かにこの場所を示している。
「・・・・・・」
郵便受けを見ても、どの部屋も名前なんて貼っていない。
携帯を取り出して、昨日の発信履歴に残った番号を表示させる。
多少緊張してきた体からふっと息を吐いて、発信ボタンを押した。
一昨日、先輩からバイト先の紹介だと渡されたのは、インターネットから引っ張ってきたらしい地図だけだった。
地図の脇には、会社名らしいものと電話番号が走り書きされていた。
調べてみると、アプリなんかを開発している会社らしい。
先輩に紹介されたものを無視する訳にはいかないし、正直、興味のある分野ではある。
金がないのも事実だし、オフシーズンだけの短期でも雇ってもらえるならばやってみたい。
そんな都合のいい話があれば、だけれども。
「はい、Midoです」
昨日問い合わせをした時に応対してくれた、やたらといい声の男が電話に出た。
「あ、すみません。昨日電話した渥美ですが」
「ああ、はい。どうしました?」
電話口の声が少し柔らかくなったのに、何となく安心した。
「紹介者にもらった地図の場所に来てるんですが・・・・・・あの・・・」
「ああ! 言い忘れてましたよね。801号室です。一階のテンキーで部屋番号を押してもらえますか?」
「あ・・・わかりました。失礼します」
このマンションであっているのかを聞きたかったのだが、男の話はその先に進んでしまっていた。
801号室。
一度押してみて、間違えていたらまた電話をしてみれば良い。
ぴんぽーんと電子音が流れて、がちゃりと音声が繋がる音がした。
「はい、渥美君?」
「はい」
「どうぞ、入って。8階に上がって来てね」
「はい」
どうやら間違っていなかったらしい。
男の声に促されてゆっくり開いた自動ドアを通り抜ける。
広いエントランスに緊張を高めながらエレベーターに乗った。
「8階って最上階かよ」
ふかふかの絨毯が敷き詰められたエレベーターにソワソワして、思わず独り言を呟いてしまう。
8階に着いて手前の部屋のプレートを見ると811号室とあった。
「しかも一番奥とか」
緊張を隠すようにゆっくりと廊下を歩くと、目線の先に一番奥の扉がゆっくりと開くのが見えた。
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