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ハイテーブルに置かれた用紙にサインする俊明を、正面に座った男がにこやかに見つめているる。
秘密保持契約書とある用紙には、要約すれば、バイトで知った情報を漏らすな、という事が書かれている。
らしい。
「募集はデバッカーだけど、ご覧の通り小規模経営だから色々やってもらう事もあるかもしれない」
「はい」
大人の男だ。
扉を開けて俊明を迎え入れてくれたこの男の第一印象は悪くなかった。
スマートな身のこなしも、柔らかい物腰も、同じ男として憧れる。
通されたショールームのようなリビングに違和感なく馴染むその男が、電話の声の主だった。
「以上、条件なんかで分からない事とかあるかな?」
俊明がサインした用紙をファイルに綴じながら男が微笑む。
「いえ、ホントに入れる時だけでいいんですか?」
「うん、構わない。こちらから呼び出す事もあるかもしれないが、その時も都合が悪ければ断っても良い」
「・・・分かりました・・・」
「あはは、変な顔しないで良いよ。そんな事を理由に解雇はしないから。この会社ね、社長が本業とは別に趣味でやってるの。だから色々ルーズなんだよね」
なんていい身分なんだろう。
学生の自分がそう思うんだから、相当なんじゃないだろうか。
ん?
この話しぶりだと、社長はこの男ではないのか。
疑問が顔に出ていたのか、男が微笑む。
「あ、社長ね。おい、御堂、こっちに顔出せよ」
男がリビングと隣の部屋を区切る壁全面の引き戸の方に声を掛けた。
途端に、向こうの部屋からがたりと大きな音がする。
驚いて男を見ると、「今来るから、ちょっと待ってね」と笑って流された。
いや、結構でかい音だったけど大丈夫か?
大きな音がした後は静かになってしまった隣の部屋に、不安を覚えながらも待っていると音も無く引き戸が開く。
そちらの部屋には窓が無いのか、照明のついていない暗い室内をモニタを光源とする青白い光がぼーっと照らし出していた。
それを背景に、目付きの悪い男が顔をのぞかせる。
「あ・・・」
「御堂です。僕は君が嫌いだ」
「え・・・? あの」
黒ぶち眼鏡の奥から鋭い眼光が俊明に注がれていた。
薄汚れたスエットに頭は寝癖がついたまま。
上背はあるが、姿勢が悪い所為でそうとは見えない。
無精髭がまばらに生えた顎は細く、その下の長い首も女性のように細い。
とっさにそれだけのことを確認した俊明は、剥き出しの敵意を受けて本能的に身構えた体から力を抜いた。
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