アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
4-4
-
開いた時と同じように音もなく戸が閉められるのを十分に確認してから、俊明は視線を戻した。
正面では何事もなかったかのように男がほほ笑んでいる。
「あの?」
「あ、私は悟と申します。宜しくお願いしますね」
「いや・・・あの・・・。あ、ヨロシクおネガイします?」
「はは、はい」
なんだ?
俺は夢でも見てたのか?
あの薄汚れた兄ちゃんが社長?
社長、だよな?
「俺、バイト、クビですか?」
全く身に覚えはないが、あの幽霊の様な社長に嫌われているらしい。
そんなバイト雇って貰えるはずがないだろう。
「ああ、あれはね、気にしなくて良いよ。あいつに決定権なんてないんだから。お財布は社長、決めるのは私、ね?」
にっこりと笑う男が、ちょっと怖い。
悟、と名乗った男をまじまじと見つめる。
何者なんだろう?
歳はそんなに若くはない。
それでも、緩く後ろに流した髪の毛は黒く艶やかだし、スマートなスーツの下の体つきに緩んだ部分は伺えない。
年齢不詳。
社長に対してのぞんざいな物言いは社員としては相応しくないだろうし、単純に見た目にもこの男の方が社長としての格があるように思える。
「はは、そんな不思議そうにしないで。私は・・・そうだな、御堂と専属契約を結んでいるクライアントです。OK?」
「は、い・・・?」
「さっき言った本業、の方ね。機密性の高い仕事を依頼しているから、そのお目付役ってとこかな。あ、お目付役って若い人には分かりにくい?」
「大丈夫です」
「そんな経緯があるから、雇う人は私の裁量で決めさせて貰うんだよね。ってことで、あいつが何と言おうが気にしないで。渥美君には働いてもらうから」
「はあ・・・」
「・・・あ、それともあんな社長の下で働くのは嫌かな?」
「いえ! あ、いや・・・う~ん・・・?」
どうなんだろう?
苛められたりするんだろうか?
いや、苛められるのは良いとして、いや、もちろん良くないのだけど、それよりも、それに俺がどれだけ耐えられるか、が、不安だ。
殴って怪我でもさせたら面倒極まりない。
「はは、そうだよね。分からないよね?」
「はい」
「じゃあ、さ」
にっこりと笑った男に言われるまま、俺はアパートに着替えを取りに行く事になった。
それから2週間、研修を兼ねて泊まり込むと言うよく分からない提案。
習うより慣れろって言うじゃない?
合わないと思ったら、やめていいからね。
今なら絶対に断るそんな怪しい誘いに、当時の俊明はふわふわと乗っかった。
悪い大人がいるなんて知らなかった、純粋な自分にため息しか出ない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
30 / 38