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落とし物ランデブー 01
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学校の玄関口、ゼェゼェと呼吸音が自分の中で木霊する。
膝に手を当て、少し濡れた黒髪をそのままに、聡は俯いて呼吸を整える。
片手に持った壊れた傘を、傘置き場に放り投げた。
猛スピードで走った為、少しは苛立ちが治まった。
「あれ、速水?どうしたの?」
下駄箱の前で、片手にスニーカーを持ったジャージ姿の男子生徒が聡に声を掛けた。
「あぁ…長谷部か…おはよ…」
「はよ~…って、お前走ってきたの?」
「ちょっとね…やるせない気持ちになって…」
「なんだそりゃ」
ハハ、と片眉を上げて苦笑される。
長谷部と呼ばれたその生徒の名前は、長谷部涼太(はせべりょうた)。
控えめな茶色に無造作ヘア。身長は聡より若干高い程度で、外見は中性的。スポーツ少年、という感じの爽やかさも兼ね備えており、男女ともに友達も多い。
聡と同じクラスで、席が名前順の為、前と後ろの席の聡と涼太はソコソコ話す間柄である。
「長谷部は朝練?」
「そそ。あ、やべ。俺早く行かなきゃなんだわ…」
「なんかあんの?」
「朝練後のプチミーティング。じゃ、後で教室でな~」
「お~。頑張れよ~。」
踵を返して、足軽にその場から走り去る涼太に、片手を上げて答える。
(教室で寝てよっかな…)
垂れてきた汗を拭い、上履きに履き替えて、聡は教室に向かった。
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