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噛めば噛むほど味が出る 01
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(結局。弁当半分くらいしか食えなかった…)
怒鳴ったり痛いところを突かれたりで、頭がゴチャゴチャになった聡。
結局お弁当を食べるタイミングを逃し、食べた後に取りに行くと伝えつつ、成美の所へ携帯を迎えに行くことはできなかった。
現在、本日最後の授業を受けている。
(この授業が終わったら、1組行って携帯受け取って、即行で帰る!!)
鳴りそうな腹を我慢して、数十分の時間を耐えていた。
キーンコーン…
漸く開放の時間が来た、と心の中でガッツポーズをした聡。
すると、目の前に座っていた涼太が振り返って声を掛けてきた。
「なあ、携帯、受け取れたか?」
「あ、ああ。色々すれ違っちゃって受け取れなかったんだ。これから1組に取りに行くよ。」
「1組?2年の?」
「うん。…なんか、ちょっと面倒そうな奴だけど…」
「…大丈夫なのか?」
「あ、いや、なんていうか…心配されることは無いから、大丈夫!」
涼太に変な気を使わせまいと、引きつり気味の笑顔を返す聡。
「何かあったら言いなよ」と眉をハの字にして笑い、前を向く涼太に心の中で感謝をする。
それから少しして、HRをしに担任の先生が教室に入ってきた。
朝に注意事項が多かった為か、帰りのHRは直ぐに終わった。
涼太に「また明日」と挨拶をし、早く携帯を返してもらおうと1組へ赴いた。
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1組も帰りのHRが終わったらしく、バラバラと生徒が教室から出てくる。
神埼の姿を探そうと1組を覗いてみると、一部に人だかりができていた。
女生徒ばかりの為、なんとなくソコが成美の席だと予測できた。
(…どうしよう。どうやって声をかければ)
1組のドア越しに躊躇していると、一人の女生徒が聡の存在に気付かず、思い切り背中にぶつかった。
「--う、うわッ!!」
ガターン!
椅子が倒れる音が1組に響き渡り、辺りがシーンと静まり返った。
痛みを堪えつつ、用件を伝えたい相手の席を見上げると、成美も眠たそうな眼を聡に向けた。
いきなり登場した見知らぬ平凡学生に、成美の周りにいた生徒達は視線を向けた。
その場の居心地の悪さに、ゴクリと聡の喉が鳴る。
(どうする。…そうだ、携帯…携帯を…)
頭では分かっているものの、声に出せない。
床に置いた手の平がジワジワと汗ばんでいくのが分かる。
そんな聡の態度に気付いた成美は、面白くなさそうな顔をして、席を立つ。
「あ…!」
「か、神崎くん!」
何人かが成美を引きとめようとするが、誰の声にも振り返らず。
そのまま教室を出た成美にハッとし、倒した椅子を大雑把に直して走り出した聡だった。
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