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噛めば噛むほど味が出る 02
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廊下を大股で歩く成美の後ろに、金魚のフンの様についていく聡。
本人としては、ついていくでは無く、【追っている】が正しい表現である。
何だあいつは、という視線を向けられ、顔が赤くなっていくのが分かるが、この辱めも携帯を返して貰えれば終わる、と必死になっていた。
人が少なくなってきて、どもりつつも漸く成美に声を掛ける事ができた。
「お、おい!」
「…」
「おいってば!携帯!」
「…あ?」
「携帯…か、返して…」
視線を足元に落としつつ、相手に伝える。
成美は視線を完全に聡に向けずに、後ろを気にする位の様子で応答した。
が、返す気配も無く、またスタスタと進んで行ってしまうのであった。
「…え。あ、ちょっ、おいってば!」
何故止まってくれないのか、疑問とフラストレーションを抱え、成美の後を仕方無く追うのであった。
―― ポツリ、ポツリと雨粒が落ちる。が、傘をささなくても問題ない程度の雨足だ。
結局、下駄箱も通り越し、正門を潜り、今朝、聡が走り去った現場付近。
「おいってば…ッ!いい加減返せよ、携帯!!」
息切れ切れに、極力大きい声で伝えると、漸く成美の足が止まった。
「…おい、ジメ男。」
(…は?ジメ…は…?)
一瞬誰に対しての問いかけなのかが分からず、ポカンと口を開けて成美を見てしまう。
「お前だよ。ジメ男。」
横目で聡をチラリと流し見つつ告げる。
「ジ…は?お、れ?」
口を片方持ち上げてニヤリと笑う成美に、徐々に苛苛が増してくる。
「…ジメ男って…なに…?」
「友達がい無ぇジメ男じゃねーの?お前。」
「い、いるわッ!」
(辛うじて長谷部がな…!)
心の中で突っ込みつつ、募り募った怒りで顔を赤くして成美に怒鳴る。
「ホントにお前性格悪いな…!どうやって今まで生きてきたんだよ!!早く携帯返せよ性格ブサ男!!!」
「…は?」
人生で初めてブサ男と言われ、カチンと来た成美は、笑みを消してジトリと聡を睨む。
一瞬怯み気味になる聡だが、腹が立つことばかりな為、負けじと睨み返す。
「け、携帯!」
バッと右手を出し、成美に催促を伝える為にブンブンと手を振る。
(もうすぐにでもこの場を去りたい…そしてもう二度とコイツと関わりたくない…ッ!)
心の声が相手に聞こえてそうな形相だが、見られている当の本人はフッと鼻で笑い、聡に携帯を投げた。
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