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噛めば噛むほど味が出る 04
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帰りの電車で受信メールを確認する。
チェーンメール以外は通知が無く、小さく溜息を吐いた。
今日は朝から色々と有り過ぎた。
少し濡れた体をドアに預け、電車の揺れを感じ、そっと瞼を閉じた。
『ジメ男』
『自分が思ったことも言え無ぇジメジメ野郎』
ジワリと染み渡る感情。
悲しい、いや、悔しい。
痛いところをヅケヅケと突いてきた成美の言葉。
もう一度、軽く溜息を吐くと嘲笑のような笑みが漏れた。
(一番イラッとするのは…確かに俺だな…)
人とのぶつかりが怖い。
ならば自分の思いを隠しておこう。
嫌いも好きも…
そんなのを伝えるなら…1人でいた方が楽だ。
中学の頃のトラウマがキッカケ。
当時、聡にも片想いをしてる女子生徒が居た。
誰にも打ち明けること無く終わるだろうと思っていたが、当時仲が良かった友人達に、ひょんなことで話してしまった。
「応援する」「相手も同じ気持ちかも」
当時の聡の気持ちは、そんな言葉に少し浮かれた。
それから日常の景色がいつもより色付いていった。
今日は声を掛けられるか。
いつかは一緒に帰ることができるか。
進展を後押しする友人達。
しかし、それが戯れ言であることが数日後に分かった。
自分の気持ちを知っていた友人の1人と、思いを寄せていた人物が両思いだったのだ。
それに加え、他の友人も事情を知っていたのである。
忘れ物を取りに行った教室で、その話を聞いてしまった。
以来、聡は人間不信になったのだ。
それが逃避だということは分かってはいる。
他人に指摘されて、聡は恥ずかしくなった。
正直、成美の言い方はイラッとするものがあるが、何も言い返せない自分にフラストレーションが溜まる。
聡は、ギュッと携帯を握りしめ、帰路に就いたのだった。
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