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噛めば噛むほど味が出る 06
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『ジメ男』と呼ぶ美形を見て、一瞬何が起きているのか理解ができない聡。
ズボンのポケットに手を突っ込んだ成美の片手首に、ガサッとビニール袋が揺れていた。
「え、何しに来たんだよ…」
「飯」
「え、あぁ。は?なんでココに…?」
「俺の勝手だろ。それ、どかせよ」
成美のいう<それ>に目線を向けると、弁当を包んでいた袋だった。
渋々どかすと、成美がそれを避け、聡の座っている位置より更に奥に腰を下ろした。
長い足が邪魔だとでも言いたいのか、足を組ませて、置いてある箱の上にドカッとのせる。
ガサガサと購入してきた物を開ける音。
「え…ココで食うの…?」
「は?」
「いや、なんでもない…」
仕方が無いので、自分も食べかけていた弁当を口に運ぶ。
ムシャムシャ… ガサガサガサ。
モグモグ…
ゴクリ…。 ガサガサガサ。
モグモグ…モグ…
(気まずい…気まずすぎる…)
モグモグと口を動かしながら、背後の人の気配を気にする。
気にされている本人は、聡の存在をまったく気にしていない様子だ。
「あのさ…もしかして…明日もココ、使ったり、する?」
「俺の勝手だろ」
(いやそりゃ勝手だけど。勝手だけどさ…!)
気にしなければいいだけの話。それは分かっているが、居心地の悪さに弁当の味が感じられない。
でもそんな事は成美には関係の無い話。
明日から他の場所を探すのか、と悩んでいると。
「お前、よくこんな埃っぽいとこで飯食えるな」
「…は?」
「体育館裏」
(…いや。いやいや。いやいやいやいやいやいや!お前も人のこと言えねぇだろ…!)
「…さすがジメ男」
「だからジメ男じゃねーよ!」
グサッ と本日一番の楽しみの卵焼きを刺してしまい、あっと声が出る。
その一連の流れを見ていた成美が、フッと笑い、手元にあるパンを齧った。
それからは特に会話も無く、ただ食べるだけで昼休みが終わった。
相手の顔色を気にせずに過ごす時間。
そんな昼休みが、2日、3日と続くと、不思議と聡の中の緊張感も解れていくのだった。
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