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嫌よ嫌よも… 05
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体育館裏に着き、いつもの定位置に座る。
辞書を横に置き、恐る恐る弁当を開けた。
案の定、綺麗に並んでいたおかずは、見事にグチャグチャになっていた。
残念な事に、今日に限ってミックスベジタブルが入っており、米と交わるそれは、食欲を失せさせた。
溜め息を吐いた瞬間、真上から声が掛かった。
「…なんだ、それ。」
急に降ってきた声に少し驚き上を向くと、成美が弁当箱に目を向けていた。
「…落とした。」
溜め息混じりに言葉を吐き、元あったであろう場所におかずを戻しながら、弁当を啄む。
いつもの場所に座るだろう成美を考慮し、横にあった弁当袋を避けようとすると、辞書が目についた。
「あ…これ、ありがとう。助かった。」
目線は成美の足元を見たまま、辞書を返そうと手に取り持ち上げる。しかし、軽くなるであろう左手から辞書の重みが消えることは無かった。
疑問に思い顔を上げると、訝しげな表情の成美と視線がぶつかった。
お互いに言葉を発することなく数秒が経つ。
静寂を破るように動いたのは、成美だった。
辞書を手に取ったと思いきや、袋から菓子パンを1つ、辞書を持ってた手に置く。
「…え、なにこれ。」
「パン」
「いや、そりゃ見れば分かるけど…なんで…」
「…食いたく無いんだったら返せ」
「…えっ」
グーーー
食いたい、と返事をするかの如く、腹が鳴る。
みるみる内に羞恥心で顔が赤らんでいく。
「お前の腹は素直だな。ひねくれた性格と違って。」
フッと笑いながら放つ言葉に、「う、うるせーよ…」と悪態をついたものの、相手に聞こえるか聞こえないかの音量で、感謝の気持ちをボソリと呟いた。
到底食べられなさそうな弁当の中身を残し、貰ったパンを口に頬張る。
パンの甘味が口の中に広がると、胸の辺りにも暖かい気持ちが広がるのであった。
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