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雨のち曇 02
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1人取り残された聡は、雨が降りしきる中、とりあえず成美を待っていた。
かれこれ5分ほど経っただろうか。
止まなそうだな、と雨空を見上げながら、フと成美のことを考えてみる。
成美は不機嫌になりつつも、なんだかんだで自分と関わってくれていた。
同情からきているのかと考えてみたが、告白された相手をあんなに無情に振る人間に、果たしてそんな感情があるのか?と聡は唸りながら俯く。
しかし、弁当を落とした時は、自分の昼を分けてくれたりもした。あれは、優しさなのか?ただ面倒だったからか?
成美が分からなかった。
苛ついた勢いで、つい本音を吐いてからというもの、あまり気を使わなくなってきたような気もする。
まだ、友達という関係には至っていないだろう。…深い関係になる前に、今からでも距離を置くべきだろうか。
マイナスな考えばかりを過らせていると、胸に針が刺されたような小さな痛みがチクリとする。
痛みに疑問を抱いていると、急に目の前に人の気配を感じた。
ハッとして相手を見ると、傘を差し出した成美が立っていた。
「…え?」
「貸してやる。」
「な…んで…」
「は?…お前傘持ってねぇんだろ?」
「そうだけど…そうじゃなくて…」
なんでそこまで、と伝えようとした、その時だった。
「速水?」
聞き覚えのある声の方へ視線を向けると、そこには涼太の姿があった。
「と…神崎?」
「…誰、お前。」
涼太を横目に見て、見ず知らずの相手に名前を呼ばれた事に、若干苛立ちを見せる。
聡は、不穏な空気に少し焦りを感じた。
「あ…俺と同じクラスの…長谷部…」
「へぇ…やっぱ仲良いんじゃん」
嫌みの様にも聞こえる涼太の言葉に、聡は若干驚きを感じた。
対して成美は、そんな態度の涼太に更に苛立ちを増す。
「…は?」
「い、いや、たまたま本屋で会って…」
「たまたま…ね…」
チラリと、成美が聡に渡すであろう傘を見た涼太は、ポツリと暗い声で呟いた。
「…俺とは…友達になってくれないんだな…。」
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