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雨のち曇 04
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「行きたくないな…」
翌日。いつもの登校時刻を迎えた聡は、重い足取りで学校へ向かう。
昨日の一件で、友達は欲しくないと考えていたものの、心の中は今日の天気のように曇っており、不意にポツリと呟いてしまった。
誰にも聞かれることのない言葉を吐くと、更に虚しさが増した。
成美に借りた傘に視線を落とす。
ーーあいつ、今日来るかな…
まるで成美と会うのを楽しみにしているかのような自分の考えにハッとして、振り払うように左右に頭を振る。
友達は作らないと、それなりに覚悟をした筈だ。思い出せ、と聡は傘を持つ右手に力を入れて、学校への道程を足早に向かうのであった。
教室に着くと、まだ涼太の姿は無かった。
恐らくは部活の朝練であろう、ホッと息を吐くと、自分の席へ座る。
成美に借りた傘は、昼に返すかもしれないと思い教室に持ってきた。邪魔にならないように、自分の席の脇に横にして置く。
ガヤガヤと賑わう教室の中、少し周囲を見渡すと、自分へ視線を向ける何人かの生徒と目が合う。
咄嗟にパッと下を向き、じんわりと両手に汗を滲ませる。
見るな。自分を見るな。
何を思われているのかと、羞恥と恐怖心で頭がパニックになりそうだった。
「あ、涼ちゃん!おはよー!」
一人の女子生徒の声に、一瞬にして体が強張った。
「おー。おはよー。」
いつもよりも覇気のない声に、声を掛けた生徒が体調を伺う。
大丈夫、という返事を返し、聡の方へ涼太の足音が近付いてきた。
挨拶をするべきなのか、迷いながらチラリと涼太へ視線を向ける。
涼太は聡の席の脇に置いてある傘に視線を落とすと、少しだけ顔をしかめるも、聡を見ることなく、何も言わずに席についた。
ズキリ。ズキリ。
自分の心が軋む音が聞こえる。
思い出せ。友達なんていらないだろう。一人がいい、一人がいいんだ。
聡は、自分へ言い聞かせるように、握りしめる拳に更に力を込めるのであった。
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