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雨のち曇 06
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結局、空になった弁当と傘を教室に持ったまま戻ってきた聡は、トボトボと席についた。
ーー帰り…どうしよう…
帰りに返せ、と言われたものの、どうやって落ち合えばいいのか。
特に予定は無いが、これ以上は成美と接するのが怖かった。
一人がいいと思っているのに、これでは中学の頃の二の舞を踏んでしまう。
入り交じる考えに混乱する聡は、その後の授業の内容が頭に入る余地もなかった。
帰りのHRを終えると、教室内がいつも通りに賑わう。
結局、目の前に座る涼太と一言も交わすこと無く、今日を終えようとしていた。
暗い気持ちのまま、聡も帰りの身支度をしていると、急に教室の外が騒がしくなる。
足元の傘を手に取ろうとしていた聡は、声のする方へ視線を向ける事ができなかった。
「帰るぞ」
屈んでいた自分の上から声が降ってくる。
聡はゆっくりと視線を上げると、そこにいたのは成美だった。
予想だにしていない成美の行動に、目を見開き、直ぐに立ち上がることができないでいる。
すると、こちらに向かってくる女子生徒の気配がした。
それに気付いた成美は、軽く舌打ちをして、聡の腕と鞄を持って足早に教室を出た。
教室にいた涼太が、二人の背中を見ていることに、気付かぬまま。
玄関口で、早く靴を履き替えるよう成美に催促をされる。
成美が苛立っているのだけは分かったが、理由も分からぬまま、聡は成美の後を追った。
「お、おい…傘…」
「持ってこい」
聡を横目に見て聡の鞄を投げるように渡すと、成美は先に進んでしまった。
どうすればいいのか分からなかった聡は、とりあえず成美についていく。
持ってこいと言われつつ、どこまで行けばいいのか。
お互いに口を交わすこともなく、気付くと駅の近くまで来ていた。
「お、おい!」
「…」
「おいってば!…か、神崎!」
聡に呼ばれると、成美は何も言わないまま、足を止める。
「俺、電車だから…傘…」
成美の背中に向けて傘を差し出す。
「…持ってこいって言ったよな?」
「…は?」
「俺ん家まで、持ってこい。」
何を言っているんだこいつ、と呆けた顔の聡をチラリと見ると、軽く溜め息を吐いて聡の腕を取って連れていこうとする。
「ちょ、ちょっと待てよ!なんで!」
振りほどこうとするが、思いの外、成美の握る力が強く、振りほどけない。
暫く抗っていたが、ハッとなって周囲を見渡すと、通りすがる人が何事かと此方を見ていた。
(…なんで俺こんな目にあってんの。)
あまり目立つ行動は取りたくない聡は、小さく溜め息を吐き、仕方なく成美に連行されるのであった。
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