アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
雨のち曇 08
-
「べ、別に嘘じゃない!」
ハッと馬鹿にするように成美が笑うと、聡はカッとなった。
「お前に何が分かるんだよ!?」
「わかんねーよ」
「わ、分かんねーのに嘘とかいうんじゃねーよ!」
「自分にまで嘘ついてるやつの考えが分かるわけねぇだろ」
「はぁ!?」
ーーなんなんだコイツは!?
聡の苛立ちが増していく。
「じゃあなんで一人がいいんだよ?」
「それは…!」
ついつい勢いで言いそうになった聡は、ハッとなった。急に訪れた静寂に、成美は真っ直ぐ聡を見て問い詰める。
「それは?」
「お、お前には関係ない…し…」
「パンと傘」
「…は?」
「返せ、今。その話で。」
「な…にを…」
拳をワナワナ震わせる。成美はもしかすると、自分を面白がっているのかもしれない。
気持ちを落ち着かせる為に、聡は目の前のコーヒーを一口飲む。
「お前が期待してるような…面白い話じゃない…」
「別に面白いとは思ってねぇし」
溜め息混じりに答える成美に対して、聡はゆっくりと息を吐き出した。
「…中学で…初めて親友と思える奴ができたんだ…けど…。騙されてた…。俺だけが…友達だって勘違い…してた…。
だったら…もう友達とか作りたくないって…それで…」
「…なんで騙されたと思った?」
「…初恋の子がいて…相談…してたんだ…。でも…実際にはソイツと…付き合ってたって…たまたま…聞いちゃって…」
絞り出すように話す聡に、成美は盛大に溜め息を吐く。
「…お前さぁ、バカなの…?」
「んな…!?」
成美の凄いあまりにも無情な返しに勢いで顔を上げると、思いの外に哀れんだような表情の成美と目が合う。
「全員がそんな奴な訳ねぇだろ。」
「…だとしても、怖いんだよ…!」
「そうやって逃げてればいいのかよ?」
「に、逃げてなんか」
「逃げてんだろ。」
成美に痛いところを突かれ、言葉が出ない。
「逃げんな。」
「…そんなこと言われ…ても…」
どうすべきなのかと瞳を泳がせる聡に、成美がゴツッと拳を聡の額に当てる。
「いっ…てぇ…!」
額を両手で押さえ、涙目で成美を睨み付けると、ニヤリと笑う成美と再び目を合わせる。
「俺で、試してみろよ。」
成美の声が、心なしか楽しそうに聞こえた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
35 / 65