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フレンドシップトリーティー 08
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それから20分が過ぎた頃。
聡がンーと背伸びをしたのを合図に、成美が休憩を告げると、部屋から出ていく。
「あー…なんか疲れたー…」
後ろに両手を付き、天井を仰ぐ。
成美のお陰で、あとは単語と復習を何度か繰り返せば、赤点は何とか免れそうだ。
ハァーと長く息を吐くと、開け放たれたドアから成美が先程コンビニで買った袋とお茶を持ってきた。
机に置くと、待ってましたとばかりに、聡が袋を漁る。
「お、これうまそー。食っていい?」
「ああ」
「やった!あ、俺お茶入れる」
そう言うと、成美の脇にあったペットボトルを取ろうと聡は立ち上がった。
しかし、ずっと同じ体制で座っていた為に足が痺れていたのに気付かず、聡は足を縺れさせて転んでしまった。
「いっ…てぇ…」
ハッと顔を上げると、自分が倒れこんだ場所が、成美の上であることに気付く。
鼻と鼻が付きそうな距離に、成美の少し驚いた様な顔があった。
驚いてフリーズしている聡の瞳に、成美の視線が絡まる。
「あっ…ご、ごごめ…ん…」
急いで退こうとするが、足が痺れていたせいも有り、成美の両肩に置いた手にぐっと力を込めたまま、動けないでいた。
鼓動が早くなっていくにつれて、徐々に顔に熱が集まっていくのが分かる。
「ちょ…っと、待って。足…痺れ…て…」
顔を見られまいと反らすと、頬に成美の髪が擦れる。ビクリと身体を揺らし焦って床に両手をついた。四つん這いになって、どうにか足を動かしてペットボトルへ手を伸ばすが、伸ばした腕を急に成美に掴まれた。
「やるから…」
「あ…えっと…、ごめん…」
俯かせた顔が上げられない。体重を支える右腕が震えているのは、辛さからでは無かった。
何故か鳴り止まない鼓動を煩く感じ、成美に聞こえない事を願いつつ、元居た場所に戻ろうとした。
しかし、なかなか左腕が離されない事に疑問を抱き、チラリと見ると、前髪から覗く成美の目と合う。
目が、離せなかった。
ものの数秒間だっただろうか、それでも聡は長く見つめあっているような錯覚だった。
スッと成美は視線を反らすと、離した左手でペットボトルを持ち、持ってきたグラスにお茶を注いだ。
「あ、ありがとう…」
「…」
沈黙と気まずい空気を絶ち切るように、聡はお茶を一口飲むと、成美に問い掛ける。
「そ、そういえばさ、神崎って休み何してんの?」
「…寝てるか、本読むか音楽聞くか。」
「漫画、とか…?」
「まぁ。たまに。」
「へー…」
会話が続かない。今まで成美とどんな会話をしていたのだろうか。中々鎮まらない心臓の音が更に考える余裕を無くしていった。
「速水は?」
「え!?」
「休み、何してんの?」
「あー…俺も…、寝てるか…漫画読むかゲーム…」
「フッ…お前は勉強しろよ」
「が、学校でしてるし」
「それがこの結果だろ」
「う…今日帰ったら、やるし…」
「ホントかよ…」
「ホントだよ!」
落ち着かせようとお菓子を頬張る聡に、成美は微笑むと、続き、と残りの文法を教え始める。
緊張から集中力が途切れた聡が成美の家を出たのは、それから1時間後の事であった。
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