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Silence is tear drop 02
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どこかのファミレスに入ろうかと思ったが、気分的な問題もあり、結局、流れで成美の家で過ごす事になった。
「…で?そんなにテストやばかったのか?」
「…いや…うん…まぁ…」
「結果でなきゃ分かんねぇじゃん。」
「…うん」
歯切れの悪い聡の返答に、成美は少しイラ立つ。
「…なに。」
「え…何が…?」
「何がじゃねぇよ。なんで暗くなってんだよ。」
「別に…何もないけど…」
顔を合わせずにいると、成美が聡の前髪をつかんで上を向かせる。
思いもよらない行動と痛みで、聡は声を上げる。
「い…っ!てぇ…」
「言えっつってんだよ。」
「い、言いたくないことも…あるんだよ…っ!」
「へ~…あんなに勉強教えてやったのに?」
「そ、それは、今度なんか奢るって…!」
「ハッ!そんな安いもんいらねぇよ。」
鼻で笑うと、「言え」と聡を鋭く見つめて催促する。
聡の前髪を掴む成美の手を払うと、暫くの沈黙の後に、聡が呟く。
「……学校で……うまくやってく自信…なくなった…」
「は?」
「…長谷部と友達になっとけば…良かったのかな…」
自嘲するように俯きながら笑って吐かれた言葉に、成美が顔をしかめる。
本音を一つ言うと、つかえていた言葉が次から次へと口から流れ出てくる。
「……俺、言ってること矛盾してるよな…。いつも声掛けてくれた長谷部に…安心してたんだ。一人でいたいとか言っといて…どっかで友達欲しいなって…思ってたんだ。長谷部が…俺のせいで口聞いてくれなくなって…すげぇショックだったけど…テストもあったし…神崎もいたし…」
握っていた両拳に更に力が入る。
「…甘えてたんだよね。俺、自分で思ってたより…更に弱かったみたい…。いざ孤立するって分かったら…俺…怖くなった…」
ゆるゆると顔を持ち上げると、怪訝そうに見つめる成美と目線が合った。
ーー神崎とは…いつまで友達で…いられんの…?
最後に浮上した疑問は、口にする事はできなかった。
試してみろ、という成美の言葉に、聡は成美との友情に期間がある、と考えていた。自分と一緒に居ても、何もメリットがない。いつかは自分も愛想をつかされるだろう。
不安要素が膨らんでいくと、聡は視線を外して俯く。
やはり深入りし過ぎた。切り捨てられる事が怖くなってしまったのだ。
「…神崎は、強いな。」
「…は?」
「一人でも、堂々としてる。…俺も、そうなりたい。」
「…別に、強くねぇよ。」
スッと下がった影から、成美が身を引いたのが分かった。
「なんだかんだ言って、俺もお前といるし。」
「…そうかな」
「そうだよ、同じだ。…俺も、後悔したことあるし。」
「…」
「…なんで俺がこんな時に転校してきたか、変に思わなかったか?」
「まぁ…確かに…」
暫く続いた沈黙の後に、成美が軽く息をつくのが聞こえた。
吐かれた息が、少しだけ震えているように思い、聡は目線を成美に向ける。
俯いたままの成美の顔は前髪で殆んど隠れていて、正確な表情を見ることはできなかったが、少しだけ覗く成美の目が、どことなく悲しそうに揺らいでいた。
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