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Silence is tear drop 05
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流石に長居しては悪いと聡は思っていた。
しかし、心の中に『帰りたくない』という気持ちが膨らむ。
友達というのは、こんなにも相手に依存してしまうものだったろうか?
ましてや成美の部屋に戻った現在、会話もそこまで弾んではいないのだ。
ただ、放っておきたくない、という思いが強かった。
「飯」
「…え?」
「…どうすんの?」
急に話を切り出して来た成美が、聡に問いかけた。
「あー…どう、しようかな…」
ガリガリ頭を掻きながらも、聡は答えを探す。
(一緒に食いたい…は変だし、食おうか?じゃなんか上からだし…)
「ラーメン」
「…え?」
「つっても、インスタントだけど。…食う?」
驚いて成美を見ると、どことなく恥ずかしそうに視線を逸らしながら言葉を漏らした。
「食う!」
思いの外、大きい声が出てしまった。
「あ…えっと、は、腹…減って…」
「ちょっと待ってろ」
「あ、俺も何か手伝う」
「…手伝うも何も…インスタントだろ…」
「お湯とか…沸かすじゃないデスカ…」
「二人もいらねえだろ」
笑いながら言う成美に「二人でやった方が早い事もある」と言い、聡は一緒に立ち上がった。
キッチンに移動したものの、やはりやる事が無かった聡は、ダイニングの椅子に腰を掛けていた。
「そういえば…今日…その…」
「あ?」
「…お父さん」
「ああ…多分遅ぇよ。大体夜中。」
「そう…なんだ…」
いつも成美はどうしているのだろう。
その時間まで、一人、マンションの一室で待っているのだろうか。
どんな気持ちでいるのだろうか。
姉の事を…どんな風に思い出すのだろうか。
「心配いらねぇよ」
聡の考えている事を察したかの様に、成美が発した。
「大分、スッキリした。お前に話して。」
「そ…うか…?」
「ああ」
「俺も。…俺も、超スッキリした。」
「超は言いすぎじゃね?」
「…ちょっと…スッキリした…」
萎縮しながら答えた聡に、沸かしていたお湯が音を立てて反応した。
ラーメンを食べ終えると、二人は成美の部屋に戻る。
「そういえばさ」
聡が帰り支度をしながら成美に話しかけた。
「英語、教えてもらったお礼したいんだけど…」
「何本分かもう覚えてねぇな」
「そういうんじゃなくて。一応、ちゃんと飯、奢るってば…あんま高くないやつ。」
「貧乏」
「貧乏で悪かったな…」
フッと笑みを漏らす成美は、思い出したかの様に聡に告げた。
「明日。空いてるか?」
「ああ…明日休みか。なんかあんの?」
「服買いに行きてぇから、そん時、なんか奢れ」
「え!!?俺が買わなきゃ駄目!?」
「違ぇよ。ファミレスかどっかでいい」
「あ、ああ。いいよ!」
「ついでに買い物付き合えよ」
「買い物…俺、服とかセンス無いな…」
「知ってる」
「見たこと無ぇだろが!」
他愛の無い会話が続き、聡も自然と感情が出せるようになっていた。
以前の様な成美と体当たりで接する恐怖心や不安が、綻んでいった。
明日の予定を決めると、聡は成美の家を後にする。
「遅くまでごめんな。ラーメン、ご馳走様」
「作って無ぇから別にいい」
「じゃあ、また明日。」
「ああ。じゃあな」
玄関口で別れ、背中にドアが閉まる音が聞こえた。
明日会えるというのに、物寂しい気持ちがジワジワと聡の心の中で膨れていくのだった。
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