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2人の距離のアルゴリズム 02
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翌日。
セットしたアラーム音に起こされ、出掛ける準備をする。
朝食を食べていると、母親から激励され続け、何度も訂正を続けていた。
結局、昨日怠った洋服選びが仇となり、待ち合わせギリギリになってしまうと、母親の誤解を更に深くしてしまった。
最寄の駅まで猛ダッシュし、予定の電車に何とか飛び乗る事ができた。
しかし、成美と会う前に破棄しようとしていた封筒の存在をスッカリ忘れていた。
降りたホームで捨てようと思ったものの、運悪くゴミ箱が設置されて居なかった。
携帯を確認すると、成美から既に到着しているというメールが受信されていた。
仕方無く帰りに破棄する事を決めた聡は、成美との待ち合わせ場所に向かう。
待ち合わせ場所は改札口を出たコンビニの前だった。
ICカードを改札機に宛て、目的の場所へ小走りで向かう。
道行く数名の女性がコンビニ前で携帯を弄っている成美に視線を投げていた。
「神崎!」
成美は聡の声に気付くと、携帯を閉じて聡の姿を確認した。
「ごめん!ギリギリ!」
「ギリギリアウトか」
「いや、セーフだろ!」
スキニーパンツにTシャツというラフな格好だが、容姿端麗な成美は、モデルと言ってもおかしくは無さそうだ。
それに対して、聡はポロシャツに少し大きめのジーパン。
平凡さが更に際立っており、成美と並ぶと、まるで凸凹コンビの様にも見えた。
「…やっぱダサいなお前」
「し、失礼な…」
聡の中では一張羅のつもりだったが、成美の姿を見ると、到底何も言い返せなかった。
「速水、今日服買う?」
「え、ああ…そんな高く無さそうだったら…」
「…なんとなくでいいなら、見てやるけど」
「…え?」
「服」
「マジで!?」
聡も年頃の高校生である。
インドア派であっても、少しは垢抜けたいという気持ちはあった。
嬉しさと興奮から、聡は成美との距離を縮めたかと思うと、急に腕を掴んだ。
「よ、よろしく!できれば、カッコイイ感じの!」
いきなりの行動に、成美は目を見開く。
そんなに喜ばれる事だったのだろうか。聡の屈託の無い笑顔から、目が離せられなかった。
成美の視線に気付いた聡は、「あ、ごめん…」と謝ると、咄嗟に掴んでいた腕を放して俯いた。
俯いた聡に対して、成美は軽く背中を押すように叩く。
「行くぞ」
「お、おう!」
まだ昼時まで時間がある為、二人は先に買い物へ出かける事にした。
最初に入ったのはチェーンストアだった。
意外そうに成美をチラリと見ると、お前は本当に何も知らないんだなという可愛そうな目線を返した。
「ユ、ユニク●くらいは来たことあるわ…!」
「別になんも言ってねえだろ」
嘲笑気味に答えると、聡は益々恥ずかしさに追い詰められていく。
「かっこいいっつってもな…大人っぽくしてえなら黒じゃね?」
「大人っぽく…」
ウーンと唸りながら、成美の服装をマジマジと見る聡。
高校生らしいラフ服装なのに、何故か成美は大人っぽい。
色合いも黒を使っている訳でも無いのに、何故だろうか。
考え込んでいる聡を横目に、成美はド直球な言葉を投げつけた。
「…俺みたいのがいいのか?」
「べ、べべ別に!お前のがイイって訳じゃない!!」
真っ赤になりながら聡が反論する。
「く、黒にする、から!」
「…じゃあ、試着してこいよ」
「し…ッ!?」
「サイズ、合うかわかんねえだろ。着てこいよ。」
「う、うん…」
大きく一息吐いた後、サイズ違いの同じパンツを2本抱えて、ゆっくりと試着室へ向かう。
スタッフの人に何とか声を掛けて、一室に入る。
黒のスキニーパンツ。
履いていたゆったり目のジーパンを脱ぎ、片足を通す。
(あれ…なにこれ…穿くの難…ッ!)
何とかして穿き終えると、試着室の中の鏡の自分の姿を見る。
確かに、スッキリして見えたが、パンツだけ変えた所で垢抜ける筈が無い。
別の見方をすると、『頑張り過ぎ』と言われそうな風貌だった。
見れば見るほど、現実を突きつけられているように思えて、聡は恥ずかしさに俯いた。
「速水」
カーテン越しに聞こえた成美の声に驚く。
「穿いた?」
「え、ああ、うん。穿けたけど…」
聡が全て言い終える前にカーテンが半分開く。
「ちょっと…似合わないかも…」
「上の問題じゃね?ほら、こん位にすれば…」
少し長めの聡のポロシャツの脇に手を添え、少しだけ上に持ち上げる。
成美の手が横腹を掠めると、聡は「ヒッ」と息を飲んだ。
「まだマシじゃね?丈が長すぎるから…」
「分かっ…た!分かったから、手、ちょっと…」
「あ?」
「く、くすぐったい…ッ!」
真っ赤にしながら抗う聡に、少し悪戯心が芽生えた成美。
悪い、と軽く言葉を吐き捨てると、思い切りポロシャツを胸元まで捲り上げた。
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