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2人の距離のアルゴリズム 03
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鏡の前で乳首を出す平凡男子と、背後にポロシャツを捲る美形男子。
予想だにしない出来事に、聡はフリーズした。無反応の聡に対して、成美も静止したままでいた。
「…」
「…」
「…な、にしてん…だ?」
声を震わせながら聡が呟くと、成美は顔を背け、肩を震わせながら笑いを堪えた。
ポロシャツを捲し上げている成美の両手を、聡は強く掴んで対抗した。
「馬鹿…!さ、下げろよ!」
「ふは…ッ」
「わ…わ、笑ってんじゃねぇ…ッ!神崎イイイィィ…!」
「悪い…ふふッ」
何とか成美の手を退けると、「着替えるから待ってろ!」と顔を赤くして勢い良くカーテンを閉めようとしたが、成美が待てと制止した。
「買う?」
「ん…一応。」
「裾あげ」
「あ、そうか」
「ちょっと待ってろ」
成美が側にいた店員を呼び、簡単に裾上げをしてもらう。着替え終えて試着室を出ても、暫く口を押さえて笑いを堪えている成美に、聡は肩で小突いた。
「そういえば神崎、服買わねえの?」
「俺は違うとこで買うから、とりあえず飯行こうぜ。」
携帯で時間を確認すると、丁度昼の時間になっていた。
会計は裾上げ後、という話を聞き、昼を食べてから受け取りに行くことになった。
近場のファミレスを見つけ出す。昼時ということもあり少し混み合っていたが、直ぐに席に案内してもらえた。
「ドリンクバー頼む?」
「ああ」
「あ、オムライスある!俺オムライスにしよー」
「じゃあ俺ステーキ」
「ステー…え、これ、2000円もすんじゃん…」
「嘘。俺も速水と一緒のでいい」
「い、いいよ、ステーキでも…」
「んな強がんじゃねぇよ貧乏人」
「貧…乏…だけど…」
メニューを脇に寄せながらクツクツ笑う成美は、ベルスターを鳴らした。
お互いにオーダーを伝えると、聡の成美の視線がバチリと合う。
思ってみれば、向かい合いながらの昼は初めてだった。
急に気恥ずかしくなった聡は、目を泳がせた後、「腹…減ったな…」と小さく呟いた。
成美は頬杖をつきながら、携帯をチェックし始める。
ごく普通の動作にも関わらず、その姿が絵になって見えた。
「…なに?」
視線を感じた成美が聡に問い掛ける。
「べ、別に何もないけど…神崎って俺の他に学校の人とメールしたり、してんの?」
「いや、お前以外教えてない。番号もメアドも。」
「…へぇ」
(俺以外、教えて無いのか…)
成美にとって、特別な存在なのだろうか?
少しだけ嬉しく感じたが、緩む口角を感づかれまいと、自分の財布の残金をチェックしようとショルダーバッグを漁った。
---パサリ。
足元に、先日送られてきた封筒が落ちた。
一気に聡の表情が強張る。
拾おうと思ったが、先に成美が行動を起こす。
成美の手に4つ折りになった封筒。中に写真が入ったままだった為、折れ目が直ぐに広がってしまった。
「なんだこれ…速水の…名前だけ?」
「ああ!それ、ご、ごみ!昨日捨てようと思って忘れてたんだったー!」
急に上擦った声に、成美が怪訝な視線を向ける。
聡が嘘を吐くときの癖だ。
「…ホントに、ゴミか?」
「え!?お、おう…」
一瞬だけ、聡の表情が曇る。
聡に目を向けたまま、成美は封筒の中身を開けてしまった。
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