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2人の距離のアルゴリズム 06
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「お前のせいで恥かいたじゃねえか…!」
聡と茂美の姿を見たウエイトレスは、そそくさとオムライスを置いた後、「ごゆっくりどうぞ!」と素早く一礼して去ってしまった。
頬張った一口を飲み込み、聡は成美に抗議する。
「速水が童貞なのが悪い」
「おま、言うなっつってんだろ!」
「汚えな、米飛んだぞ」
「うっふぁい」
眉をしかめる成美に対し、聡はざまあみろと言うような視線を返した。
オムライスを平らげると、お代わりのドリンクを取りに聡が席を立つ。
「神崎、なに飲む?」
「アイスコーヒー」
「分かった」
ドリンクバーに並び、コーヒーと自分のコーラを注ぐ。
席に戻ると、自分の座っていた場所に女性が二人並んでいた。
(も…もしかしなくても…逆ナン…?)
「あ、お友達?」
「お邪魔してまあす!」
「ど、どうも…」
つまらなそうに携帯を弄っていた成美の前にコーヒーを置く。
座るに座れない聡は、持ってきたコーラを立ちながら啜っていると、成美が聡を見上げた。
「…座れば?」
「う、うん…」
「さっきから全然話してくれないんだよ~」
「ねえねえ、何歳なの!?」
「高2…です…」
「うそ!見えな~い!」
「ねえねえ、名前は?」
「これからカラオケとか行かない?」
(おお…これが…逆ナン…)
標的は自分で無いことは分かっていたが、聡は初めての経験に少しだけ感動した。
「ねえ、君、聞いてる?」
「え…あ、えっと…」
「君じゃなくて、携帯弄ってるそっちの君!」
ガーンと漫画の様な効果音が聡の中で鳴り響いた。
携帯を弄っていた成美が、聡に耳打ちする。
「会計して」
「あ、う、うん。あの…すみません、俺のカバン…」
向かいにいる女性が「これ?」と聡のカバンを指差す。コクリと頷くと、お前は邪魔だとでも言うように聡にカバンを押し付けた。
レシートを持ち、会計を済ませる。
席に戻ったが、相変わらずな女性達と成美に、聡は深い溜め息を吐いた。
「あれえ?オカエリ~」
一人の女性が聡の存在に気付く。明らかに馬鹿にしたような口調に、少しだけムッとした。
支払いを終えた聡の姿を確認すると、女性の方を見向きもせず成美が席を立つ。
「どこいくの~?」
「私ら暇だから、どこでもついてくよ!」
キャラキャラ笑う小綺麗な女性は、本当に着いてきそうな勢いだ。
聡の横に立った成美は、小声で聡に囁いた。
「速水、先に謝っとく」
「え…?」
すると、成美が急に聡の肩を抱き寄せ、女性人の前に立った。
「俺ら、付き合ってるから。邪魔しないで」
「な…!?」
いきなりの出来事に、聡は口をパクパクさせる。
「嘘でしょ?」
「その冗談おもしろくないって~」
聡には大ダメージだったが、相手にはあまり効果が無かったようだ。
(とんだ赤っ恥くらった…)
聡が肩を落としていると、成美が聡の顎を掴んで上を向かせる。
--チュッ
「マジだから。」
一瞬の事に、聡の思考が止まった。
それを見ていた女性2人も、まさかキスをするとは思っていなかっただろう、顔を紅潮させて硬直する。
その隙を見計らい、成美は固まったままの聡の腕を引くと、その場を足早に去った。
ファーストキスは、ほんのりとコーヒーの香りがした。
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