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天邪鬼ロンリネス 06
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事が済んだ後、成美はティッシュ箱を聡に投げ、「シャワー」と一言呟き部屋を出て行った。
聡は倦怠感で起き上がれず、ただ起こってしまった事を思い返して呆然とする。
先日まで気分を害していた相手が、自分に欲情するとはどういう事か。
今まで微塵も感じなかった成美の感情が、爆発したかの様に聡にぶつけられたのだ。
(とりあえず…落ち着こう…)
できれば自分もシャワーを浴びたい。
着たままだったシャツに、所々汗が浮き上がっていた。
ティッシュで下半身を拭き取っていると、ジワジワと羞恥心が広がる。
使用済みのティッシュをゴミ箱に投げ捨て、置き去りになっていた下着を身につける。
俯いたまま座り込むと、そのまま夢の中へ誘われた。
バサリ、と急に頭に何かが掛けられ、聡は目を覚ました。
どれだけ寝ていたのだろうか。
覆われたものを確認すると、バスタオルだった。
飛んできた方を見上げると、そこには上半身裸の成美がドアに寄りかかる様に立っていた。
「入ってこいよ」
「お、おう…場所…どこ…?」
「こっち」
ヨロヨロと立ち上がると、部屋を出て成美の後に続く。
案内された場所に入り、ドアを閉めようとしたが、不意に視線を感じた。
洗面台に有った鏡越しに、成美と目が合う。
「今日、どうすんの?」
「…え?」
「帰る?」
「え、あ…うん…明日、学校あるし…」
聡の答えを聞くと、成美はパタンとバスルームのドアを閉めた。
ただ行為を終えて満足したのだろうか。
成美が冷たくなる理由も、自分の曖昧な気持ちも全て洗い流してしまおうと、聡は身に着けている物を全て脱ぎ捨て、頭からシャワーを浴びた。
一通り身体を洗い終えると、ズボンを部屋に忘れた事に気付く。
シャツに下着1枚という他人の家と思えない格好でバスルームを出て、タオルを頭から被ったまま部屋に戻った。
相変わらず上半身に何も身に着けていないまま、成美はベットの上で寝転がっている。
視線は壁に向けたまま、聡には成美の背中しか確認できずに居た。
「…風呂、ありがとう」
「ああ」
ズボンを手に取り、モソモソと穿き終える。
「…神崎…帰る…ぞ?」
「…ああ」
相変わらずこちらを向く気配も無い。
一体何が気に食わないのか、検討もつかなかった。
「…何、怒ってんだよ…」
「怒ってねえって」
「…じゃあ…何、不貞腐れてんの?」
「は?」
あからさまにイラっとした声が聡に向けられる。
その態度に、聡もフラストレーションが溜まる。
「あのさ…怒る立場、前もだけど、俺じゃね?」
「…なにが?」
「なにがって…俺もOKだったらやれよ…こういうの…」
「…」
「俺、まだお前の事、そういう風に考えらんないっつってんのに…」
「お前も溜まってたんじゃねえの?」
「そういう問題じゃねえよ…」
もう怒鳴る気力も残っていない聡は、額に手を当てた。
「速水…俺のこと嫌い?」
「いや…嫌いって訳じゃないけど、そうじゃなくて…そういう好きじゃないっていうか…わかんないというか…急過ぎるというか…」
聡が言葉を捻り出していると、成美がゆっくりと身を起こした。
「初めての相手、姉ちゃん。中学ん時に」
「…はい?」
聡は口をあんぐり開けて成美を見つめる。
何故成美が急にそんな話をし始めたのか、頭で疑問がループする。
「向こうが誘ってきたんだけど、勃ったって事は好きって事じゃねえの?だから、お前もそうなんじゃねえの?」
「いや。いやいやいやいや。ちょっと待て。」
「は?」
「それ、生理現象じゃね…?溜まってた…だけ…じゃね?」
聡は自分で言ったにも関わらず、チクリと胸が痛む。
他人から恋愛対象に見られる経験が無かった聡は、疑心暗鬼になっていた。
外見も平凡。何も長けている物が無いであろう自分にそこまで好意を向けられるのは、何故なのだろうか。
「…お姉さんの事は…その…好きだったかも知れないけど…」
「もういい」
急に発せられた成美の一言に、言葉を詰まらせる。声色から苛立ちが伺えた。
「忘れろ」
「…え?」
「今日のことも今までの俺とのことも、忘れろ」
「…ッ!ま、待てよ!無理だろそんなの…じゃあ、ちょっと考えるから」
「もういいっつってんだろ!」
初めて聞く成美の怒鳴り声に、ビクリと全身を震わせた。
数秒の沈黙の後、成美は絞り出すような声で静かに呟いた。
「…帰ってくれ」
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