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カウントダウン。
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年越し蕎麦の用意をしてる彼の背中に顔を埋める。
ふんわりと香る、花の蜜のような甘い匂いが心地好くて好きだ。
「わ、どうしたのー?」
「..手伝う。」
「ふふ、ありがとう。」
「ん。」
隣に並びエプロン姿を盗み見ると、ぱちりと目が合った。
恥ずかしくなり、慌てて完成した料理を盛り付けて運ぶ。
ふにゃりと笑った彼は御機嫌のようで、デタラメな鼻歌を歌ってる。
あっという間に準備を終え、二人でリビングに戻り向かい合って食卓に着いた。
「いただきます。」
「..いただきます。」
手を合わせて、一口また一口と食べ進めていく。
「美味しい。」と言うと、彼は嬉しそうに蕎麦を頬張った。
ちらりと時計に目を向けると、後数十分で新しい年になろうとしていた。
「今年も、もう終わりですね。」
「早かったなぁ。」
「..ですね。有り難いことに、忙しくさせて頂きましたし。」
「そうだね。沢山の人に龍のバンドを知ってもらえて、僕まで嬉しくなっちゃった。」
屈託のない笑顔を向けられ、頬が熱帯びていくのを感じる。
「あはは、赤くなった!」と愉快そうに俺の頭を撫でた。
照れくささと嬉しさで、変な顔になっていないか心配だ。
「よし、年が明ける前に片付けちゃおうか。」
「あ、はい。」
手早く食器等を片付けて、ソファーに腰掛ける。
時刻はちょうど23時59分になったところ。
テレビ画面の向こう側は、カウントダウンを開始していた。
「僕たちもカウントダウンしようよ!」
「こういうの、好きですよね。」
「良いじゃんかー。しよ?」
「仕方ないですねー。」
呆れたフリして笑うと、「わーい!」と彼も笑った。
画面と睨めっこしながら、真剣にタイミングを見計らってる姿は、子供みたいで可愛らしい。
そんなことを考えているうちに5秒前になり、声を合わせてカウントを開始する。
ーーー5、4、3、2、1
ふと悪戯心が芽生え、0と同時に唇を重ねる。
顔を真っ赤にしながらパチパチと瞬きする様子が可笑しくて、思わず吹き出してしまった。
「りゅ..っ!」
「ふはっ、あけましておめでとうございます。」
「ん、あけましておめでとうっ」
「..今年も、要さんと一緒に新年を迎えられて良かったです。」
突然ぼふっと胸に飛び込んで来たと思ったら、そのまま肩を震わせ始めた。
急な出来事に動揺していると、ゆっくり顔を上げ涙交じりに呟いた。
「..狡い。」
「え?どうしたんですか。」
「幸せ者だなぁ、と思って。」
「そんなの俺も一緒ですよ。」
数秒後に我に返り赤面すると、「今日はよく顔が赤くなるね。」と彼は笑いながら耳元で囁いた。
顔を埋めるように抱き寄せ、誰のせいだという言葉を飲み込む。
暫くこうしていると、腕の中から穏やかな寝息が聞こえてきた。
このまま寝てしまいたい衝動を抑え、ベッドまで運んで隣に潜り込み毛布を掛ける。
「おやすみなさい。」
額にキスを落とし、温もりを感じながら眠りに就いた。
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