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そう思わずに居られないだけの出来事が……起こったばかりなのだから。
―――僕は……僕は、駒なんかじゃ……。
名前も知らない男に言われた言葉が頭の隅を過ぎる。
遊びの駒だと言われたけれど、これは遊びなんかじゃ無い。
「いや……だ」
意識が途切れてしまう恐怖に叶多は小さく喘ぐけど、重たくなっしまった瞼は本人の意思を裏切って……。
「や……」
暗く染まった意識の隅でドアの開く音を聞いた気がしたが、最早指一本ですら、自分の力じゃ動かせなかった。
***
『叶多は僕の事が好き?』
『うん、大好き』
『じゃあ……ずっと傍に居るんだよ。約束だからね』
『分かった。約束する!』
『もし、破ったら……』
―――その時は……。
「うっ……んう」
息苦しさに意識が戻った。
―――今のは……初等部の頃の……。
まだ幼い御園と自分が密かに交わした約束は……今となっては守れないけど、きっと相手は覚えていない。
今更何故、そんな夢を見たのか全く分からないけど、あの頃の自分はとても幸せだったと今なら分かる。
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