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「もう、圭吾とこうやって話す事は無いと思ってた。俺にもっと力があれば……」
「その事はもういい。瞬が俺を嫌って無いって分かったから……今はそれだけで」
ずっと心の深い所に燻っていた重圧が、圭吾の言葉でほんの僅かだが軽くなったような気がする。
過去の出来事を振り返れば、心が軋んで酷く痛む。距離を取った一番の理由は、その呪縛から逃げ出したいと思ってしまっていたからだ……と、この瞬間、瞬ははっきり自覚した。
「叶多は、ホントにイイ奴なんだ。例え過去がどうであれ、こんな扱い受けていいような奴じゃ無い。だから……」
「分かってる。俺を信じろ」
抱き締める腕に力が籠り、瞬は小さな吐息を吐く。
ようやく少し近付いた彼を、危険な目には遭わせたく無い。
だけど、叶多を見捨てるなんて事、今の自分には出来やしない。
「俺に出来る事はする。だから……一人で危険な事はするな」
「……ああ」
真摯に響く圭吾の声に、やはり泣きたい気持ちになるが、グッと唇を噛んで堪えると、瞬はおずおずと腕を伸ばして彼の背中を抱き締めた。
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