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―――はやく、逃げなきゃ。
走っても走っても、泥水に足を取らたように全く前に進めない。
そんな夢から目覚めた叶多は痛む身体を無理矢理起こしてベットの脇へと立ち上がり、シーツを身体に巻き付けた。
「く……うぅっ」
素早く動いているつもりだが、実際には全く身体が命令に従わず、ふらついてよろける脚はいつ膝をついてしまってもおかしくは無い状況だ。
「……あっ」
ふと動かした視線の中に皿と紙が映り込み、焦点を合わせていくと、サイドボートの上にはもう冷めてしまったであろう粥と、几帳面な文字で書かれたメモが並べて置かれていた。
『起きたら食べて下さい』
たった一行。事務的に書かれたそれからは感情は伺えない。
―――確か、学校へ行けと言われてた。
世話が済んだら学校に行けと須賀が射矢に言っていたのを思い出し、だから誰もいないのだと分かった叶多は身体の力を少し抜いて息を吐いた。
付けたままだと食べれないという配慮からか、口枷も外されている。
―――今しか……ない。
逃げるならば今しかない。
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