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冬場とは違い、6月になれば5時を過ぎてもまだ明るい。
校舎から出ると寮へと続く煉瓦で出来た歩道があり、等間隔に植えられた樹木が傾きかけた陽光の中で風にザワザワと揺れていた。
「アイツと……何話してた?」
「え?……あっ」
「佐野と、何を話してた?」
いきなり声を掛けられた事に動揺して口籠った叶多に、怒るでも無くもう一度須賀は同じ質問を繰り返す。
「……何も」
「何もって事は無いだろ?」
「……ゼ、ゼリーを……」
「ゼリー?」
「食べろって、渡されて……それだけ、です」
いつも喋るなと言われているから、どうしても……怯えが先に来てしまい、上手く言葉が紡げなかったが、それを咎める事もしないで「そうか」と須賀は呟いた。
梅雨の晴れ間というのだろうか?
爽やかな風に視線を上げると、飛び込んできた綺麗な緑に、ほんの少しだけ目を奪われて立ち止まりそうになるけれど……手首を引っ張る須賀の力に我に返って息を吐く。
「明日は、雨だな」
斜め前方を歩く須賀が唐突に告げて来るけれど……返事をしても良いのか分からず、見えない事は分かっていたけど叶多は小さく頷いた。
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