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―――明日、お母さんに……。
須賀の言葉が本当ならば、久しぶりに会う事が出来る。
―――なんて言えば……。
逃げるチャンスが突然降って湧いた事に、心臓が音を速めるけれど、同時に背中を満たす温もりになんだかとても困惑した。
「好きに動いてみればいい」
囁くような低い声。頭の中を見透かしたかのようなその言葉に、叶多は唾をコクリと飲み込み恐る恐る顔を上げる。
「でも、良く覚えておけ。お前の主人は、俺だ」
そんな叶多を見下ろしながら、口角を上げ綺麗に微笑む彼の放った一言に……叶多は再度視線を落としてフルリと身体を震わせた。
***
「はじめまして、叶多君……だね?」
「はじめまして、小泉叶多です。病院や僕の学校の事まで面倒を見て下さって、本当にありがとうございます」
叶多が深く頭を下げると、目前に立つ壮年の男性は、
「そんなに畏まらなくてもいいよ」
と優しい声音で告げて来る。
「叶多。ちょっと痩せたんじゃない?」
「うん、この前風邪をこじらせちゃって」
ベッドの上から話し掛けてくる母親に笑みを向けながら、そう答えたけど自分なんかより彼女の方が痩せた気がした。
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