アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
103
-
―――そうだ、絶対に。
少しでも気を緩めた瞬間、これよりも下は無いと思った更にその下に突き落とされる。
―――だから……。
今自分の背中を撫でる須賀の掌の温もりに……気紛れ以外の意味など無いと叶多は必死に思い込む。
残酷に、叶多を駒だと言い放った非情な彼が、気紛れに……少しの飴をチラつかせた。それだけだ。
―――本当に、それだけ。
何度も心でそう繰り返し、叶多は息を浅くする。
そうしなければ息が詰まって、呼吸ができなくなりそうだった。
「雨、強くなってきたな」
耳許で低く囁く声に、叶多が薄く瞳を開くと、今度は頭を軽く撫でられ首筋にキスを落とされる。
「んっ……ぅ」
擽ったさに吐息を漏らした叶多がそれでも耳を澄ますと、防音の筈の窓の向こうから微かな雨音が聞こえていた。
雨、大嫌いな雨。
大好きな父が死んだ日も、葬儀の日も、そして……叶多が初めて男に身体を開かれた夜も、外では雨が降っていた。
止む気配の無い激しい雨。
身体を包む温かな熱。
懸命に考えた末に答えはもう出た筈なのに……思いも因らない穏やかな時間(とき)が叶多の心を惑わせた。
第二章 終了
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
202 / 552