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「じゃあ、思ったより時間無かったから、話は今度会った時に……またね」
そんな叶多の頭を撫で、そう言い捨てた佐野は窓へと近付き手早くそこを開くと、二階だというのにそこから下へと綺麗に飛び降りた。
「佐野っ」
慌てたように近付いた瞬が窓の下を覗くけれど、すでに姿は無かったらしく、伊東を見遣って軽く首を振る。
「仕方ないな。ったく……何がしたいんだか」
肩を竦めた伊東がそう呟いた時に授業は終わり、叶多はそっと教科書を閉じると、興味津々と言った様子でこちらを見て来るクラスメイトの視線が痛くて俯いた。
「大丈夫だった?何かされたり言われたりしてない?」
心配そうに尋ねる瞬に、
「大丈夫だよ」
と返事をしながら、思い出したように叶多の心拍数が跳ね上がる。
『終業式の後、叶多が母親を見舞った帰りに迎えに行く←唯人からの伝言』
本当なら、書き残された佐野からのメモを彼等に見せるのが筋なのだろうが、どうしてもそれが出来なくて……叶多はギュッと手のひらを握ると渇いた口内を潤すようにコクリと唾を飲み込んだ。
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