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「でも叶多……顔色が凄く悪いよ。連れてってあげるから、保健室で少し休もう」
「僕は大丈夫だから……」
「いいから行こう。悪いけど……叶多の“大丈夫"はあてにならない」
「……分かった、ごめん」
真っ直ぐ自分を見下ろしてくる心配そうな瞬の視線に、それ以上は拒めなくなって叶多はゆっくり立ち上がる。
「じゃあ、俺は戻るから」
その様子を見ていた伊東にポンと優しく肩を叩かれ、
「ありがとうございます」
と、頭を下げて礼を告げると、目を僅かに眇めた彼は、
「礼なら瞬に言って」
と答え、軽く瞬に手を振ってから教室を後にした。
「行こう、叶多」
「うん……瞬、ありがとう」
そっと叶多を気遣うように、肩に手を添えて歩き出す瞬に、つられて足を踏み出しながら、彼にもきちんと礼を言う。
「気にしないでいい。友達だろ?」
それに答える瞬の笑顔が、今の叶多には眩しくて……。
思わず視線を逸らした叶多は、閉じた教科書を机の中に仕舞うのを……この時すっかり忘れていた。
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