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親切
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次の日。
暁はいつの間にか自分の部屋のベッドに運ばれていた。
昨夜の情事の余韻が残っており、暁は起き上がれずにいた。
(体が重い…)
全身に、特に腰の辺りが響くような痛みに動く気が起きなかった。
どうせ学校に行っても苛められる、それならば休んでしまった方が逆に気楽と考え、暁は再び眠りに落ちた。
どれくらい長い時間寝ていたのだろうか。
暁が目を覚ました時には、外は夕焼けに染まっていた。
(…お腹すいたな)
朝食と昼食を取らずに寝てしまった為、暁の胃の中は完全にからっぽだった。
少し楽になった体を起こそうとした途端、誰かが部屋に入ってきた。
「………」
「さ、西城、君…」
昨夜に自分がされたことを思いだし、暁は怯えた表情をした。
あれだけしてもまだ苛め足りないのだろうか。
西城はゆっくりと暁に近づいてきた。
「ひ…や、来ないで…っ」
後ろに後ずさりをすると、ヘッドボードに暁の背中が当たった。
体を硬直させていると、ベッドの手前辺りで西城は歩みを止めた。
「…ほらよ」
「え…?」
ぽんっと暁のベッドの上に水とパン、そして今日学校で貰ったであろうプリントが投げ出された。
「あ、ありがとう…」
「………」
困惑しながら、暁はそれらを拾いあげた。
水とパンを手にした途端、ぐぅ、と腹の音が鳴った。
「あ、ご、ごめん…」
「…いいから早く食え」
「い、いただきます…」
ぎこちない手つきでパンの袋を開けた。
ふわっとパンの香りが食欲をそそらせる。
暁は、ゆっくりと噛み締めるようにパンを咀嚼した。
西城はベッドに腰を下ろし、黙って座っていた。
風呂場の時と同じように、静かな時間がただただ流れていた。
20分かけて、ようやく暁はパンを食べ終えた。
空腹が満たされ、暁は少し元気を取り戻した。
「ごちそうさま、美味しかったよ」
「………」
礼を言っても相変わらず西城は無反応だった。
無反応というより、一点を集中して見ているようだった。
(…あれ?)
よく見ると、西城の目が半分くらいしか開いていなかった。
細目で分かりづらいが、眠そうな顔をしているのは確かだった。
姿勢も少し猫背気味になっている。
「西城君…もしかして、眠いの?」
無反応と分かりつつも声をかけた。
すると、ぐらりと西城の体が前に傾いた。
「えぇ!?ちょ、ちょっと待っ…!」
慌てて服を掴もうとするが間に合わず、西城はゴッという音と同時に顔面から床についた。
しかし、そんな痛みなど気にせずに西城はそのまま寝息をたてた。
「そんなにゆっくり食べてたかな…?」
自分よりも大きい訪問者をどうしたものかと考え、とりあえず仰向けに寝返りをさせて毛布をかけた。
初めて見る西城の寝顔を、暁はまじまじと見つめた。
(西城君、意外と綺麗な寝顔してるんだなー…)
人の寝顔は意外な一面が見れて面白い、西城のような無愛想な人は尚更だ。
前に、葉月の寝顔を見た時、美人なだけあってとても綺麗と言うと
『あんたはどっちかと言うと可愛い方よね』
とからかわれたことがある。
自分の顔が嫌いなので複雑な気持ちではあったが、葉月にだったら悪い気はしなかった。
暫く寝顔を見つめていると、貰ったプリントの事を思い出した。
(今日はこれだけの為に来たのかな…)
少し警戒しつつも、暁はベッドから出て、起こさないようにプリントに目を通した。
プリントは国語の課題で、文章を読んで問題に答えるものだった。
(よし、今日は集中出来そうだし、今のうちにやっちゃおう)
暁は椅子に座り、机と向かい合わせになって課題を始めた。
1時間後。
課題を終えた暁は軽く背伸びをした。
同時に、今まで眠っていた西城が目を覚ました。
「あ、おはよう…かな?」
「………」
寝起きで少しボーッとしている様子だったが、沈みかけている夕日を見て立ち上がった。
「どうしたの…?」
「…課題、終わってない」
ポリポリと頭をかきながら困ったような顔をしてみせた。
西城の課題よりも自分の事を優先してくれたのだと知り、少し嬉しくなると同時に申し訳なくなる。
しかし、西城の悩みは課題が終わっていない方では無さそうな雰囲気だった。
西城の鞄から課題のプリントが少し見えていたが、全く手をつけていないわけではなかった。
ただ、所々に空欄がある。
特に文章についての説明する問題は、綺麗に手をつけていなかった。
「もしかして、西城君って国語が苦手なの?」
「………」
思い返すと、西城は口で説明する事は殆ど無かった。
大体は行動に移すか、暫く間を置いてから喋り始める。
話し方も箇条書きみたいな感じである。
「あの…もしよければ、分からないところ教えるよ…?」
「………」
西城が暁を一瞥し暫く考えた後、プリントを取りだし暁の前に置いた。
教えてくれという意味なのだろう。
「えっとね、まずはここの文章の一部を使うんだけど…」
暁は丁寧に教えていき、西城は無言のまま真剣に聞いていた。
その時間が、何故かとても楽しく感じた。
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