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花火大会
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「…てことがあったんだ。駄目かな…?」
「あー、いんじゃない?あんたなら変なことには使わなそうだし」
お盆休み、暁は葉月の住むアパートで過ごしていた。
談笑をしてた時に携帯の事を思いだし、話を持ちかけてみたらあっさり許してくれた。
「携帯欲しいって言わないから放っておいたんだけど、あんたもそういう年頃なのねー」
「別に携帯の欲しさに年齢は関係無いと思うけど…」
「何言ってんの。あんたぐらいの年の99.5%は持ってるのよ」
「凄く微妙な数字だね…」
あはは、と二人は笑った。
携帯は後日、ショップに買いに行くことになった。
「あ、そうだ。明後日、また神社の近くで花火大会やるんだって。行く?」
「行く!」
人混みの多い所は苦手だが、暁は花火大会が大好きだ。
高校一年の時、葉月に初めて花火大会に連れて行ってもらい、巨大な花火を見て感動した。
それ以来、暁は花火が大好きになった。
幸せに笑う暁を余所に、葉月は押し入れから何かを引っ張り出した。
「お姉ちゃん、それは?」
「見ての通り、浴衣だよ。あんたと私ので色違いのやつを買ったんだけど…私は浴衣が似合う年じゃないし、やめとくわ」
「えっ、お姉ちゃんが着ないなら、僕も着ない…せっかくお揃いなんだし…」
「分かったわよ、そんなにしょげないの。普通、男子って姉とお揃いなのは嫌がる気がするんだけどなぁ」
「お姉ちゃんと一緒なら嫌じゃないよ」
「おいこら、シスコン」
「いたっ」
葉月は笑いながら暁にデコピンをした。
おでこを擦りながら、早く明後日にならないかなと暁は思った。
花火大会当日。
暁と葉月は祭に赴いた。
暁の浴衣は紺色の生地に白色の金魚が描かれていて黒い帯、葉月の浴衣は白地に赤い金魚が描かれていて、ピンクの帯を巻いている。
周りの人達が葉月と暁に目を奪われていたが、二人は気づかないふりをした。
「花火が打ち上げられるまでまだ時間はあるし、何か適当に買ってその辺で座って食べよっか。何か食べたいものある?」
「じゃあ、リンゴ飴」
「あんたってお祭りに来たら、いの一番にそれを頼むよね。まぁ可愛いからいいけど」
「可愛いって言われても嬉しくない…」
「誰だって姉は弟を可愛いと思うものよ」
笑いながら、葉月はむくれる暁の頭を撫でた。
あ、そうそうと葉月が思い出したように言った。
「携帯はちゃんと持ってきてる?」
「うん、持ってきたよ。ほら」
「よしよし。これで万が一迷子になっても大丈夫ね。今までは連絡手段が無かったからはぐれないように気を使ってたけど、やっぱあると便利なもんね」
「でも、それでもはぐれるのは嫌だよ…」
「そうは言っても、今年は人が多いからちょっと人混みに紛れただけではぐれるかもよ?だから、肌身離さず持っておくことと、今のうちに使い方を覚えときなさい」
「う、うん。えっと…アドレス張を開いて…」
暁が操作の確認をしていると、葉月の携帯が鳴った。
葉月が携帯を取り出して画面を確認すると、暁の名前が表示されていた。
「今かけなくてよろしい」
「ごめんなさい」
笑いながら二人はリンゴ飴を売ってる屋台へ向かった。
数分後。
「…なんでこうなったかなぁ」
案の定、葉月は暁とはぐれ、神社の鳥居の近くで佇んでいた。
今年は人が多い、しかもめんどうな人ばかり。
最初はちょっと目を離した隙に暁とはぐれてしまい、携帯を取り出そうとしたら、たちの悪い男達にナンパされた。
それからは人混みを利用して何とか逃げ切り、暁の携帯に電話をしようとしたら画面は真っ暗のまま動かなかった。
「あー…こんな時に電池切れるとか…ちゃんと充電しとけばよかったわ…」
落胆して携帯を仕舞い、人混みの中から地道に暁を探す事にした。
「出ない…」
葉月とはぐれた暁は、葉月の携帯に電話をかけていた。
何回かけ直しても葉月は電話に出なかった。
「どうしたのかな…携帯を落としたとか?だとしたら、どうやって見つけたらいいんだろう…」
うーん、と悩んでいると、どこかから声が聞こえた。
葉月の声では無いことは確かだが、その声と呼び名に聞き覚えがあった。
「おーい!眼鏡ちゃーん!」
「東野君!?」
人混みの僅か向こうの方に、自分に向けて手を振っている東野がいた。
東野は人混みを掻き分けて暁に近づいてきた。
「やっぱり眼鏡ちゃんだ、浴衣着てるから一瞬分からなかったっす。肌が白いからその色凄く似合うっすよ。あ、リンゴ飴うまそっすね」
「え、東野君がどうしてここに?」
「宿場がここの近くなんす。昨日合宿が終わったんで、みんなで遊びに来たんすよ」
「終わったばかりなのによくお祭りに来れるね…」
「そこは運動部の特権ってことで…あれ?眼鏡ちゃん、携帯買ってもらったんすか?」
東野は暁が手にしている携帯を見て言った。
「うん、昨日買ってもらったんだ。それで、お姉ちゃんとはぐれちゃって電話をかけてるんだけど一向に出なくて…」
「無くしたか電池切れかもしれないっすね~…それなら俺も手伝いますよ」
「本当に?ありがとう!」
暁が満面の笑みを浮かべると、東野は少したじろいだ。
「い、いえいえ別に…あ、連絡先を教えてくれますか?寮の時にも言ったと思うんすけど」
「うん、いいよ」
操作が分からないので、暁は東野に全て任せた。
アドレス張に葉月と東野の名前が載っているのを見て、暁は笑みを浮かべた。
ふと、暁は気になる質問をぶつけた。
「あのさ、さっきみんなで来てるって言ってたよね?」
「言ったっす」
「みんなって…剣道部全員?」
「そうっす!アニキももちろんいるっすよ!」
嬉しそうに言う東野を余所に、暁は表情が強ばった。
どんな顔をして会えばいいのか、緊張が高まった。
「でも、人混みは苦手だって言ってどっか行っちゃったんすよね~帰る時は合流するから連絡くれって言われたんすけど」
その言葉を聞いて、暁は安堵の息を漏らした。
それよりも今は葉月を探す方が先だ。
「僕、向こうの神社の方を探してみるよ」
「じゃあ俺はこの辺りを探してみるっす。お姉さんの特徴と名前は?」
「葉月って名前で、僕と色違いの浴衣を着てるよ。白い生地に赤い金魚、ピンクの帯」
「了解っす。それらしい人を見つけたら電話しますね」
「うん、また後で」
二人は別行動をし、葉月を探し始めた。
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