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猫の、気持ち。②【憂心目線】
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連れて来られたのは、大学の裏庭にあるベンチ。よくここで2人でお弁当食べたなあ…
彼がそこに座って、フられてから初めてちゃんと顔を見た。急に目頭が熱くなって目が霞んできた。今は涙を堪えるので精一杯だった。中々声が出せない。
そんなおれを知ってか知らずか
「憂心も座って。」
真っ直ぐな瞳で見つめてくる。
「……」
目は合わせないで、無言のままただ頷いて、少し離れて隣に座った。
座っても自分は俯いたまま。
服のこすれる音がして、近づいてきたんだと分かる、そうしてこちらに向かって彼が話し出した。
「憂心、ごめん。」
「…………」
内心、何に対して謝られているのかがわからなくて、返事をしなかった。
「あの時…あんなこと言ってごめん…」
「それは……」
「せっかく言ってくれたのに、あんなこと言って本当にごめんなさい!」
ちらっと彼を横目で見たら膝に頭がつきそうなくらい頭を下げていた。
「良いよもう、顔上げて。」
「でもっ…!」
「良いから。ね。」
「うん……」
そう言うと彼はゆっくりと顔を上げた。
そして目が合う。
前までなら…冬人さんに出逢う前なら、今きっと、どきどきして好きで好きで、こんなこと言えなかっただろう。
「好きだったんだ。」
「うん…」
やっぱりそういう顔するよね…
「ごめん、ほんとはそんな顔させたくて言ったんじゃなかったんだ…こんなこと言われても迷惑でしかないのはわかってるけど」
「迷惑なんかじゃないよ!気持ちには答えられないけど、今はもう、そんなこと思ってないから!」
「………あの時、あれは確かに思ったことだったけど、口に出すつもりじゃなかった。一生言わないで傍に居ようって思って…でもそんな考えは、最初から無理だったのかもしれない。結局君を傷つけてしまった…」
「俺…俺さ!」
「うん?」
「好きだって言われた時、別に気持ち悪いだなんて思ってもないし、言うつもりなくて、でもっ、今まで一緒に遊んだり、学校行ったり住んだり、親友だと思ってたのに、俺とお前の気持ちって全然違ったんだと思ったらなんか腹が立って…あんなこと、言っちゃって……本当は誰よりも傷ついたのは憂心だって気づいたのに、家、帰って来ないし…荷物なくなってるし…俺も結構さみしかったんだぞ!!!」
「え…?」
「まあ、そういうことだから…これからも、親友として、普通にしてほしい…」
「……」
「嫌か…?」
「ううん、夕佐(ゆうすけ)が良いなら。」
「ほんとに!?」
「うん」
「やったー!!」
「ははっ」
おもちゃを与えられた子供みたいにはしゃぐ夕佐を見て嬉しくなった、なんだか今までのことを全て許された気になって。
そういえば、好きになったのはこんな風に素直で優しくて、無邪気に笑う所だったなあ。
「じゃあ今日帰りにどっか寄ってこう!」
「うん」
「楽しみだなあ」
「そうだね。」
夕佐に会って、気づいたことがある。
思い出す気持ちは、全て過去形だったこと。好きだったなあ、とか、こんな気持ちだったな、とか。
そしてもう、彼にどきどきしていないこと。
愛しいと思っていた気持ちは、今は別の人へ……思い出されるのはやっぱり冬人さんで、好きになって良いですか、なんてただの言い訳で、もうとっくに好きだったんじゃないか……
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