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八熊がぐっと頭を近づけると煙草と甘い日本酒の匂いが濃くなる。照明を背にした彼の表情に影が落ちた。
「なァ、どんなヤマを抱えてンだ」
白島はブランクやテルの薬を脳裏に浮かべると目を伏せ、自分の頰に当たる外套の毛皮を煩わしそうにして首を捩った。
「…さぁな…。だが、相当ヤバイと思う」
それを見ていた八熊は、ほう、と息をつくなり何の前触れもなく白島の唇を奪おうと鼻先を寄せた。
しかし寸前の所で相手のガードが早く運び屋は真顔のまま掌で顎を押し返すと淡々と告げる。
「女にトラウマがあるからって、俺に手を出すのはやめてくれないか」
八熊は首を振って掌から逃げると少し眉根を寄せた。
「誰でもイイってワケじゃねェんだぞ。折角ウチに自分から飛び込んで来たんだ、相手しろよ」
「それは、失敗した時の話だろ……」
不本意だが以前のミスでこういった約束を取り付けられており、そうしなければテルが代わりに売り飛ばされてしまうのだ。
八熊は酒臭いがザルだ。酔っているわけではなく単純にこの様なやり取りをして遊びたいだけなのだろう。己より一回りも歳上の男に呆れた溜息をついた。
そんな白島の心中を察するも三十路半ばを過ぎた男はあえてやめるつもりは無いらしく、手にしていた帯を一気に剥ぎ取った。
「!」
浴衣の下は下着以外何も身につけていない。いよいよマズイと暴れ出した獲物を逃すまいと八熊は酷く楽しそうな顔で肌蹴た布を引っ掴む。咄嗟に刀に手を伸ばしかける白島のマウントを勝ち取った彼は、目下にあるほど良く鍛えられた白い躰を舐め回すようにまじまじと眺めた。
嫌でも自分を性対象として見ている瞳の色に気づかされ、カッと顔面に血がのぼる。嫌悪感よりも恐怖心が勝り、やめてくれ、と懇願する声が自然と震えた。
「…お前ェみたいに毛並みの良い野郎はなかなかいない」
まるで犬か猫を値踏みするような例え方に対して、反発する気力さえ奪う権力者の迫力が有無を言わさない。抗う両腕を拘束し、捕らえた男の喉元を貪るように舌が這った。
「ンッ…」
脚をバタつかせ反感の意思を表しつつも、全力で逃げ切る事が出来ないもどかしさが溢れる。上下関係を植え付けられた人間のサガなのかもしれない。
「く、そ…ッ」
女を扱うかのように優しく耳殻や首筋を愛撫する動きと音に羞恥と絶望が入り混じった呻きが漏れる。喉仏を深く噛まれ腰をかき抱かれた時には男としての抵抗の気力が尽きた。
ぐったりと堕ちた白島に獣の滾りを燃やす八熊はその無防備な薄い唇を塞いだ。
「…っ、旦、な」
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