アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
scheme(画策)
-
「また、どこかの庇護下にある訳ではなく、自発的な独自の集まりである可能性が高く『犯罪組織を撲滅する犯罪集団』という名目を掲げているようです」
秘書がパソコンを操作すると、アンデゼールのホームページと思われる怪しげな海外サイトがモニターに映し出された。
「インターネット上ではマフィアと抗争する際の資金を集めていますね」
「ふざけおって。何でそんなヤツらがこの国に、ワシらに目を向けとるんじゃ」
「…そのことについて漸く分かったンだが、」
画面を見て大きく悪態をついた他の組の頭を八熊が遮った。
「一番最初に狙われたウチの安曇野だが、あそこは主に貿易を任せていた所だ。最近は俺に内緒でアメリカのマフィアと繋がって、薬品の密輸に関わっていた。取引先は例の久留和製薬だ」
久留和製薬、その名を聞いて室内が少々ザワつく。
「アンタらの中にも、あいつらのウマイ話に乗って株を買い漁ったヤツがいるんじゃねェのか」
耳にするなり難しそうな顔をする面々を見て八熊は呆れたように息を吐いた。
「そのマフィア、ネーロ一家とかいうデケェ所に、アンデゼールは画策しようとしてる。ヤツらは一家の足場を片っ端から潰していくに違ェねえ。だから俺たちまで標的にされるんだ。久留和からサッサと手を切ることに越した事はねぇぞ、ジジィ共」
この見解は彼らにとって今の状況下で最も妥当な推論だったようだ。一見、何の共通点も無いように思われたアンデゼールの襲撃だが、被害にあった組織と久留和製薬との関わりは一致している。八熊は懐を漁って煙草を取り出した。
「だが、手を切った所で…アンデゼールがそもそもの目的を果たすつもりだったら、俺たち組織が滅びるまで目を付けられる可能性が高そうだ。それこそ無差別になァ」
会議が終了し各々の持ち場に戻っていく参加者たちを見送った後、白島は八熊の元へ寄った。
「旦那、おかげで助かったぜ」
「…そうか。で、これからどうするつもりだ?」
米国のマフィアと手を組んだという製薬会社、あのパーティに居たブランクという男。そして赤猫。マフィアを追うアンデゼール、少しずつ繋がりが見えてきた。
「勿論、ナルに会いに行くさ…」
もう一度そうか、と呟いた八熊は思案顔で相手を近くへ呼び寄せた。
「シロ、ちょっと来い」
彼は油断していた白島のシャツの襟を掴むと自分の方へ引き寄せ、その勢いで相手に口づけた。
「!」
ちゅ、と触れ合うだけのキスをして離れた八熊は舌舐めずりをしながらテルの方へチラッと視線を向ける。
そのニヤリと嘲笑する目つきを見て少年の毛が怒りでザワリと逆立った。
この場にはテルだけではなく八熊の側近が2名と秘書がいる。誰もが不意打ちの状況に面食らう中、多数の視線を感じて狼狽える白島に対してまさにしてやったりといった表情で傍若無人の若旦那は運び屋の肩を押した。
「なら手伝ってやらァ。ヤツらを誘き出すいい方法がある」
少年は八熊の挑発にまんまと乗せられた事に奥歯を噛んで悔やみながら無意識に手を掛けていた銃身から手を離した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
35 / 49