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rival(ライバル)
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「……。」
一歩後退した白島の腰を抱き寄せ、至近距離で瞳をギラギラと輝かせながら八熊は運び屋の返事を急かす。精悍な顔つきが困惑に歪められ、八熊が代償を何で求めているのかを察知している。
ともあれ、他人を売るという選択肢は先程撤回させたばかりである。今更気が変わることもないはずだ。と高を括り、それらしい抵抗を見せない男の唇を奪おうとした。
しかしそれは叶わない。突如と白島の体が後ろへ引っ張られるように仰け反り、二人の間に何者かが割って入った。黒いポンチョを纏った少年が、八熊を遮る。突然のことに八熊は驚いて引き下がった。
「!?…テメェ、どこから…ッ」
白島が部屋に入ってきた時は確かに一人だった。第三者の気配すら感じなかった。
八熊の叫びにも似た声を聞き、側近の二人が何事かと部屋に飛び込んでくる。まるでテレポートしてきたかの様に現れたテルは、室内にいる人物をぐるりと一瞥してから冷ややかに黒い瞳を向けた。
「どうせこんな事だろうと思っていた」
我に返った八熊は少年を睨みつけて唸る。どれほど注意してきてもこの小さな悪魔はいつも邪魔をするのだ。
「おい、なんでこいつまで呼んだんだ!」
「いや…はは、車で待ってろって言ってたんだけどよ」
白島は冷や汗を流して引きつった笑みを浮かべた。テルは嫌みたらしく、そして一言一句聞き取りやすい口調でハッキリと相方に向き直る。
「弱味につけ込むようなやり方でしか奪えない輩に、従う必要はない」
八熊の額に青筋が浮き出る。
「オイガキィ…ぽっと出の野郎が何様のつもりだコラァ」
「貴様は長く白島と居た割には何も掴んでいないようだがな」
「…ッ」
少年の吐き捨てた皮肉に、言葉に詰まった八熊を見て南雲がフッと鼻息を漏らして失笑した。それを遊馬が小突いて止める。
テルと八熊は何度も顔を合わせているが、まともに口をきいたのはこれが初めてだった。
「俺を殺してマフィアに引き渡すならやればいい。出来るものならな」
「テメェ……マジで殺すぞ」
見る間に殺意を滾らせた八熊の胸を今度は白島が軽く押さえる。
「旦那、それくらいにしてやってくれ…しかもこいつは元殺し屋だ。後でちゃんと言っておくから…」
どうどう、と仲裁に入る白島に続いて側近の二人が主人の肩を叩いた。
「お頭ぁ、こればっかりは同感でさぁ。意地張ってないで正攻法でいったほうが…」
「あんだってェ?!」
「こらッ遊馬ッ、油を注ぐんじゃねぇッ」
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