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雨の日の入寮
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黒い雲から雫がひたひたと落ちてくる。
はじめはゆっくり、少しずつだったのがいつの間にか落ちてくる速度は増していき、それはやがて土砂降りになった。
「最っ悪……!」
悪態を吐き、雨の中全身を濡らしながら走る水無月深冬は見えてきた目的地に、ジーンズが汚れるのも厭わずに一層走る速度を速める。ぐんっと速度が増し、耳元で鳴る雨音に眉を顰めた。
常用している傘が壊れてしまい、いつもは持ち歩いている折りたたみ傘を失くしてしまったのは痛手だった。
外に出て電車に乗るまでは良かった。電車を降り、歩き出した瞬間に降り出した雨。嫌な予感はしていたのだ。天気予報はハナから信用していない。
「はっ……はぁっ……はぁっ」
目的の一軒家、もとい今日から住むことになる寮に辿り着いた深冬は軒下に滑り込んで肩で息をする。荒れた呼吸が整った頃には足元に水溜りが出来上がっていた。
まるで濡れ鼠だな、なんて自嘲を零して頬に張り付く黒髪を掻きあげる。毛先から雫が垂れ、輪郭をなぞっていく。水滴のついた黒縁眼鏡を外せば、伏せられた黒い瞳を覆う雪のように白い睫毛が顕になった。
見る人によっては男とも女ともとれる中性的な容姿はコンプレックスで、繊細な造りをした顔立ちは男らしさなど微塵も感じさせずあまり見せたいものではない。
「ここに何かようかな?」
レンズの水滴を拭うのに集中しすぎて周りを見るのが疎かになっていた深冬は、はっとして肩を震わせた。
慌てて眼鏡をかけて前髪を直し、顔を上げると、紺色の大きな傘をさした色素の薄い髪の美女が立っているではないか。
「え、あー……今日から入寮する者なんですけどー……」
「あぁ! 君が水無月君? 話は聞いているよ。中に入らないのかい?」
「……ずぶ濡れだったんで」
気まずげに視線をさ迷わせながら言えば気の毒そうな顔で納得したように頷かれた。それほど深冬の格好が酷かったのだ。ジーンズは色が変わるほど水を吸い、Tシャツなんて雑巾みたいに絞れるだろう。
「なら尚更早く中へ入ろうか。風邪を引いたら大変だからね」
にっこりと笑い、勝手知ったように玄関を開けた美女に驚いた。
深冬が入居する寮は男子寮のはずだ。女性は家族以外連れ込むことを禁止されていると案内書に書かれていたのを読んでいるし、もしかしたらこの美女は誰かの家族かもしれないと思ったがそれにしては軽装すぎると首を傾げた。
「どうしたの? 中へおいで」
「あの、ここって女人禁制みたいなこと書かれてませんでしたっけ?」
「? そうだけど……あ、俺? あはは、れっきとした男だから大丈夫だよ。高校二年生の榊秋斗です。宜しくね」
……男!?
ぽかん、と口を開けて唖然とする。確かに、よく見れば喉仏が出ているし、深冬よりも身長が高くて肩幅も広いが、どこからどう見ても女性にしか見えない。中性的なんてどころではなくとんでもなく綺麗な美女。
榊秋斗。深冬にとって、安らぎを与えてくれる青年との出会いであった。
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水無月 深冬MinazukiMihuyu
1月13日/AB/169/1年2組/美術部/第三寮三○六号室/おれ(舌足らず)
黒髪(肩について目にかかる長さ)/黒いたれ目(左目の下に泣き黒子。黒縁眼鏡)/中性的で繊細な顔立ち
緩い。マイペースで自由。一人の時間が好きだけど独りは嫌い。
空いた時間は絵を描いて過ごしている。
榊 秋斗SakakiAkito
10月9日/A/174/2年1組/生徒会副会長/第三寮三○二号室/俺
色素の薄い金茶髪(ふわふわ肩上。センター分けで右耳にかけてる)/碧眼(睫毛ばさばさ猫目)/柔和な彫りの深い美女顔
学年首席の秀才。特技は料理。空気を読むのが得意で線引きが上手。
百合の花のような先輩
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