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現実逃避してしまいましたよ、水音。
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いやいやいや。ちょっと、ちょっと待て。
かんちがいするな、俺。冷静に、冷静に考えてみろよ、な、俺。自分の都合よく解釈するなよ。
幻聴?そら耳?
いや、確かに聞こえた。
誰が言った?水音…じゃないとしたら……あ、俺?いやちがう。ちがうよね〜俺。
そんな思ったことをそのまま、しかも恥ずかしげもなく『スキです』なんて言える迂闊な人間ではなかったはずだ。俺は。
じゃあ何?誰だ?
あ、妖精サン?妖精サンが言ってくれたのかなぁ〜。ありがとねぇ妖精サンよぉ〜〜……
チラリ。バチッ(視線があった音)
ジィー…………。
…………。
「水音、妖精サンの声、聞こえたか?」
「………」
フルフル。
………いやいやいやちがう。たとえ水音が言ったとしても、水音の人脈ネットワーク(なんだそりゃ)は限りなく狭い。
その中での俺だ。そりゃそういうことも……。
「え?」
ちがう、ちがう、かんちがいするな。
「水音」
俺は怖々水音に話しかけた。
「妖精サン…いません」
「お、おぅ」
「……さっき、お話ししたの…ボク」
あ、やっぱり?
なんて軽く流せるわけがない。
「……聞こえませんでした…か?」
「いや、えっと…」
「ボク、…司さん…にスキ言いました」
水音はまるで世間話でもするかのように淡々とそう言った。
顔には何の表情もない。ただただ直球の好意のコトバを俺にぶつけてくる。
「司さん…もスキ、言いました…」
その言葉に改めて反芻してみると、確かに俺はコイツにスキって…
あぁ、言ったな。けっこうテキトーに。
あ、コイツはそれに答えただけ?
なんだ…
って何ガッカリしてるんだ、俺は。さっきからどうもおかしい。どうかしてるんだ、うん。きっと、そう。
「司さん…どうか、した…?」
「ある意味したかな〜」
「え?」
「いや、なんでもないんだ。それより、それよりも、だ。
水音、お前にずっと構ってやりたいのはやまやまなんだがな、俺は明日仕事なんだよ」
そう。この短い三連休も今日で終わる。明日は仕事を休むわけにはいかない。
「留守番、できるか?」
「…る、す?」
「留守番、分かんないか?」
フルフル。
「…分かります。でも…仕方…分からない…。ごめんなさい」
水音がシュンとうな垂れた。
「なんだ、そんな気負うほど難しくないよ?ただ三つだけ、約束してくれるか?」
「!…約束…できます」
「そうか。じゃあ、まず一つ目だ。
俺がここにいない間にインターホンが鳴ってもジッとしてること。絶対に見に行ったりもしないこと。
相手がいなくなるまでその場に静かにしておくこと。分かった?」
「インターホン…ぴんぽん、…鳴りますか?」
「あぁ、まぁウチはどっちかっていうとベルなんだけどな」
「ベル?…??りん、ごーん?」
「ハハハ、まぁそんなカンジだ。守れるか?」
「はい…」
水音は神妙な顔をして、大きく頷いた。
「アハハハハ、なんか水音の顔見るとガキ大将にでもなった気持ちになるなぁ」
「が…き?」
「まぁいいや。んで、二つ目。そこに電話があるだろ?」
俺はドアの近くに備え付けてある固定電話を指差した。
「俺がいない間は電話にでないこと」
「…はい」
「三つ目はキッチンの方にはいかないこと。危ないからな?」
「…はい」
「そんだけだ。なんか質問あるか?」
フルフル。
「んじゃあ、以上だ。今日はもう寝るか…」
時計を見ると、寝るには少し早い時間だったが、今日は特にやることもないので寝ることにしよう。
あ、そうだ…。
「水音。今日はもう寝ないか?」
「司さん…が寝る…なら」
「じゃあお前は寝室に行こうか」
水音の髪も完全とはいえないが乾いていた。どれくらいの間話していたのだろうか。ふいに気になった。
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