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神さま
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そうしてボクは司さんを玄関まで見送ったあと、思わずそこに座り込んだ。
ジャージごしにフローリングのひんやりとした感触が伝わってくる。それをなんとなしに指先で触れる。
自分が思っているよりも冷たくて、少しだけ驚いた。でも、そんな気持ちもすぐに沈んでしまう。
また、1人になった。
あそこから出てきて数日が過ぎた。その数日はボクに孤独というものを意識させられるものだった。
たしかに運よくボクは、司さんという神さまみたいな人に会えた。司さんは優しい。こんなボクにいろんなことを教えてくれる。
でも…なんでだろう?
あそこでも充分孤独だったはずなのに、どうしてか、今の方がつらいと感じている。
どうしてだろう?
別に司さんと一生会えなくなったわけでもない。司さんがボクなんかと一緒にいてくれる理由は分からないけど、それは司さんが優しいから。
1人になってしまったボクを、かわいそうだと思ってそばにいてくれている。ここに置いてくれている。
嬉しい。嬉しい、はずなのに…。
どうしてこんなに不安なんだろう?
どうして…どうして…。
その時ふと、ボクの着ている司さんのジャージが目に入った。
あぁ。
ボク、司さんという存在を失くすことが怖いんだ。
そんな答えがストンと心の中に降りてきた。
初めてボクと会話という会話をしてくれた人。優しくボクの頭をなでてくれた人。抱っこされることがあんなにも気持ちいいものだとは知らなかった。
体がふわっと浮いて、びっくりしたボクを優しい笑顔を向けてくれた。
神さま。
そんな言葉がぴったりな人だと思う。
ボクは、寂しいのかな?
ふとそんなことを思った。司さんがいなくなって寂しいのかな…。
たしか教科書に載っていた小説では、大切な人ができるには時間が必要だと書いてあったけど、ボクはこんな数日で…
少し想像とちがったな。
………。
どうしよう。
本当にどうしようもなく寂しい。泣きそうかもしれない。
ボクはここに来てからどれだけ泣けば気がすむのだろう。
自分でそんなことを思うけれど、涙はそれに刃向かうかのように溢れてくる。
本当に…どうしよう。
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