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初対面
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「凛太朗、凛太朗!」
凛太朗を揺さぶると意外にも簡単に起きてくれた。
「はいはい、わかってますよ先輩。…へ?」
凛太朗はポケ〜ッとした顔でその場に座り込んだ。そしてその数秒後、たっぷりの間をあけてから真顔になった。
「おはようさん」
「…おはようございます。えーと…もしかしなくても俺、なんかやらかしましたかね?」
凛太朗は苦しまぎれに笑みを浮かべた。
「やっぱり覚えてないか。お前、昨日清水部長たちと飲みに行っただろ」
「はい。え?なんで先輩が知ってるん…あ!!」
「思い出したか?」
「え、えーと…俺…あの」
「うん♪」
「…すいませんでした!」
「よろしい!」
どうやら思い出したようで何よりだ。凛太朗は俺の笑顔の裏に少し黒いオーラをだしただけで全てを察する男だ。
怒ったときの俺を十分すぎるぐらい知っているだろう。
「あの…先輩」
「ん?」
「ヒェ! …じゃなくて、その…その子、もしかして先輩のお子さんですか?俺…あの聞いてないんですけど!」
凛太朗は興味津々と言わんばかりにこちらに身を乗り出した。俺はゆるむ頰を自覚しながら水音を目でみた。
水音はぺっとりと俺の背中にひっつきながら、凛太朗をまばたき一つせずに見つめている。
それを意味深と受け取ったのか。
「え!? マジですか!」
「なわけないだろ」
「…ですよねー」
凛太朗はそれ以上は追及せず、俺に隠れたままの水音に話しかけた。
「こんにちは」
「………」
水音は話しかけられたことに驚いたのか、完全に隠れてしまった。
俺の背中で顔をグリグリされているのを感じながら凛太朗に苦笑いを返した。
「ゴメンな、この子、少々人見知りでな。そのぐらいにしてもらえねえか?」
「そ、そっすか」
「あぁ、悪りぃな。ちょっとワケあってうちで預かってる水音だ。水音が慣れてきたらまたかまってやってくれ」
「えぇ」
「さてと…そろそろ朝飯にしねぇと」
「…! 先輩が作るんですか!?」
「ん?あぁそうだが」
「なんか…知らなかったッス。先輩が料理するなんて」
「意外か?」
「いえそう言うわけでは!」
「まぁ人並みには作れるよ。味にはあんま自信ないけど」
今日のメニューはコーンスープとトーストにスクランブルエッグだ。
あ、コーンスープはインスタントな。
「水音、お前どうする?」
まだひっしと服の袖を掴み俺から離れない水音に話しかける。
「……お水、ください」
「あいよ」
「水? そんなんでいいのか?水音君」
コクリ。遠慮がちに頷いた水音を横目に俺はコーンスープの粉末を取り出す。
「司さん…!それ、もしかして…こーんそーぷですか!?」
「こーんそーぷ?あぁ、コーンスープな」
そうだけど、と珍しく食いついてきた水音に俺は少々驚いた。
どんな食べ物にも興味がなかった水音が、コーンスープのイラストに興味を示した。
いったい何事だ??
目をキラキラさせている水音にコーンスープの箱を渡してやる。水音が今日俺から初めて手を離した瞬間だった。
コーンスープに負けた俺って……いやいや悲観的になるな、俺。
「どうかしましたか?」
会話を聞いていた凛太朗がキッチンに顔を出した。水音は…コーンスープに夢中か。
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