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水音の気持ち side司
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「司〜!」
「はい! じゃあね、元気にな」
プツッ…
「誰?」
水音との会話に横入りしてきたのは、俺のスマホを覗き込んできた山口青史。
「青史か。おはよう」
「おう、はよ! で、誰と喋ってたんだ?
お前がこんな朝から電話してんの珍しいな
もしかして女か? 女なのか!?」
あいかわらずにぎやかなヤツだ。
「おい、聞こえてるぞ」
「あれ?俺、口にしてたか?」
「いや、顔に書いてある。丸わかりだ」
あらま。
「それは悪かったな」
「別にいいよ、そんなこと」
「む、もうこんな時間か…。そろそろ仕事始めるとするか」
「え、ちょ、おい!」
俺は青史から逃げ出した。
あれ?なんで俺、逃げてんだ?
「お前、逃げんなや〜!」
ま、いっか。
俺は休憩スペースを出て、自分のデスクに向かった。
座るとすぐに、凛太朗に声をかけられた。
「あ、先輩」
「ん、あぁ凛太朗か」
キィと音を立てて、イスごと振り向いた。凛太朗は俺のすぐ後ろにいたらしく、自然と上目遣いの姿勢になった。
「先輩、水音くん、どうでしたか?」
「お前のいう通りだったよ。水音、なんか泣きそうになってた」
凛太朗は、あはは、と声をもらすと満足そうな笑みを浮かべた。
「そうでしょう! 水音くんて、なんか表情はあんま変わんないですけど分かりやすいですよねー」
「え、マジ? 俺、いまだに分からない時が多々あるんだけど…」
俺がそう言うと、凛太朗は少し真面目な顔になった。
「何言ってんですか!今日なんか、あんなに先輩にひっついて…俺に先輩とられちゃってスゲー寂しそうでしたよ」
「え?そうか…」
あぁそれでいつもより甘えただったのか…
「お前、今朝会ったばかりなのにスゴイな。やっぱ兄弟いるからか?」
「え、そうなんですかね?」
「そうなんじゃないか?」
「はぁ…」
凛太朗は腑に落ちない様子だったが、時間が時間だったので自分のデスクへ帰っていった。
俺は仕事の書類をデスクの上に出しながら思った。
たぶん、俺が他人の行動に敏感じゃないのは、きっと兄弟がいなかったからなんかじゃない。
俺が、俺に、そうさせてるんだ。…おそらく。
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