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ブラックコーヒー
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「それで、話というのは…」
給湯室のすぐそばにあるちょっとした休憩スペースに腰掛け、俺は早々に口を割った。
ちょうど俺の座っている位置からはこの階唯一のエレベーターが見える。
奥にある応接室より入り口に近いここを選んだのは、何か嫌な予感がしたからだ。
俺の本能が、コイツはキケンだ、と叫んでいる。
だが、そんなに相手のことを知っているわけではないので俺のかんちがいなのかもしれない。
杞憂に終わるかもしれない。
だから、俺はここにいるのだ。
そう自分に言い聞かせながらも、相手の顔をジッと観察する。
そんな俺を不審に思わないのか、藤本部長はそのままの笑顔で話し出した。
「あぁそうですね…まずは、この前お会いした音無…いや水垣司さんのことなんですが…
仲がよろしいのですね?」
「ええ、先輩にはお世話になってますけど…」
俺は眉をひそめた。
「先輩がどうかしたんですか?」
「実は彼とは同じ高校の出でしてね、ちょうど一学年先輩にあたります」
「え!?」
驚いた。
まさか藤本部長の高校時代の先輩が司先輩だったとは…
「当時もわけあって接点が多くてですね、そりゃあ仲良くさせてもらいましたよ」
「で、でも、先輩はたしか知らないって…」
「名字が変わっていたというのは知らなかったんですが、一目見て分かりましたよ。
面影がそっくりなんです、目のあたりがね」
話が思わぬところに向かっていく。
藤本部長は続ける。
「本人はあれでごまかしたつもりなんでしょうが、そんなのでわたしは騙されませんよ」
そう言った藤本部長の目は生き生きとして見えた。
「どういうわけか分からないんですが、その時からわたしが苦手みたいで…
いつも逃げられてしまうんですよ。
……別に取って喰いやしないのに、ねえ?」
藤本部長の真っ黒な目がこちらを見据えるように見た。
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