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ブラックコーヒー
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コクリ…
コーヒーを飲む藤本部長の喉仏が上下する。
藤本部長の頼みを勢いで受け入れてしまったその翌日。
俺と藤本部長は再び膝をつき合わせていた。
あれからお互いの連絡先を交換し、そのまま何事もなく帰った。
そしてその夜すぐにSNSが鳴った。明日少しでもいいので会いたいとの内容だった。
簡潔に書かれた文章のそばに一つだけ、顔文字が添えてあった。
気を使ってくれているのかとも思ったけど、藤本部長が俺に気を使う理由はない。
顔文字をうつ藤本部長を想像して、かわいいと笑ってしまったのは秘密だ。
「さっそくなんですが…」
「え、は、はい!」
「………」
「………」
「……プッ」
笑われた。
なんだよ!こっちは緊張でガッチガチなんだよ!悪りぃか!!
ふくれる俺をよそに藤本部長は数十秒ほど笑った後、いよいよ話を切り出した。
「先日の話しなんですが、まず手はじめにどこか行きませんか?」
「え?」
「場所はまだ決めてないんですがね。
それはおいおい決めるとして…まずは凛太朗さんと仲良くなりたいと思いまして…
どうですか?
わたしと一緒に出かけませんか?」
「はぁ…いいですけど」
俺と仲良くなりたい…??
まったくもって藤本部長の意図が分からない。
いったい俺は何を頼まれたのか…
「あの…」
「はい? どこかオススメの場所があるのですか?
あ、わたしのことなら結構ですよ。
凛太朗さんとならどこでもいいので」
「あ、えと、映画館、とか…?」
くっそ! 俺のヘタレ!!
早く聞けよ、俺は何を頼まれたのかってさ!
「いいですね!映画館。
なつかしいなあ…
わたし、学生時代以来かもしれません」
「え、普段、あまり行かれないんですか?」
驚いた拍子に思わず口から出てしまった。
「あはは、お恥ずかしながら、そういうものに疎くてですね、あまり行く機会がないままなんです。
凛太朗さんはそういうのに詳しそうなので、勉強させてもらいましょうかね」
「そうなんですか…
なら、ちょうど俺オススメの映画があるので見に行きませんか?
バラエティーものなのでたぶん藤本部長でも楽しんでもらえるかと!」
「そうなんですか…それは楽しみですね。
それでは次の定休日に行きましょうか」
「え!次の定休日?
それって…来月じゃないですか!」
「すみません、何分配属すぐの身ですからこれから忙しくなると思うので…」
藤本部長の少し太めのまゆがさがる。
丁寧な口調とはまたちがう、ひとなつっこい仔犬のような顔だった。
「あ、そうでしたね!
こちらこそすみません! その、俺だけ突っ走ってしまって…」
いつのまにか夢中になっていた。
すばやくイスに座りなおす。
「いえいえ! すごく嬉しかったですし、それに…楽しそうに話す凛太朗さんは可愛かったですよ」
また、藤本部長はクスクスと笑う。
身体じゅうの熱が顔にいった心地がした。
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