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トラウマ
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…そんなことをしたコイツを、
忘れろ、なんてできるはずがない。
俺は藤本の問いに対して無言で睨みつけた。
それでも藤本に焦る様子など微塵も感じられない。
その、何を考えているか分からないところが昔から苦手だった。
その頃からなんだか不気味で、怖かった。
「名字が変わったのはなぜですか?
音無先輩」
「…親が離婚した。それだけだ」
「いやそんなはずありませんよ。
だって先輩の離婚はたしか高校二年の1学期の終わり頃でしたから」
なんでお前がそんな離婚した時期まで知ってんだよ。
俺は周りの目を気にして離婚のことは青史にしか打ち明けていないはずなのに…!
「…成人してから名字を変えた、それだけっつってるだろ。
他に意味なんてねぇよ」
ウソだ。
あの日から謎の恐怖に憑かれてあまりに怯える俺を
唯一俺の身の上を知ってる青史がみこして、
名字を旧称に戻すことを提案したのだ。
一応戸籍上は父子家庭の俺だが、父親とは一年に何度か会うぐらいの付き合いでもある。
母親は…知らない。
今どこにいて、何をしているのかも。
「そうなんですか。
それにしても最近運命感じちゃうんですよねー
同じ会社の同じ部で働くことになったと思ったら、休みの日でもこうやって会えるなんて!
俺、チョー嬉しいですよ」
「…なんでお前と凛太朗が一緒にいるんだよ」
「あらら、無視ですか?
ま、先輩なら許せるんですけどね〜
先輩はあいかわらずカワイイし」
クスクス笑う藤本をキッと睨みつける。
「質問に答えろ。答え次第では承知しねぇ」
「なんですかー妬けますね。
凛太朗が羨ましいっすよ」
「凛太朗は俺の後輩だ。巻き込むな!」
「俺の後輩でもありますよ」
「!」
「ついでに先輩は俺の後輩でもあります」
「黙れ!」
藤本はいけしゃあしゃあと腕を組んで言った。
だが、ふいに真顔に戻って続けた。
「別に特別な意味なんてありませんよ。
あんなのお遊びです」
「お前…!
凛太朗に手ェ出すなよ!
凛太朗はなんにも知らないし関係ないんだぞ!」
「だからお遊びですって。
ちゃんと本命は大切にしますよ。
…それより」
そこで一旦藤本は言葉を切った。
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