アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
怒りの咆哮
-
俺が口を開くと、3人の視線が一気に俺に集まった。
青史先輩にだけ目配せをした。
青史先輩は少しだけ目を細めた。
「部長といっしょにいなかったらどこに?」
「え、ちょ…だから、虎が…」
「水音くんかぁ。
司、なにか水音くんがいそうなところとかないの?」
青史先輩にはりついたままの司先輩がフルフルと首を振る。
甘えてる。かわいいな…先輩。
司先輩って優しいけどどちらかというと積極的に人に関わろうとしない人だと思ってた。
少し、びっくり。
「まあとりあえず移動しません?」
司先輩もああだし。
後につづくセリフを青史先輩は上手く汲み取ってくれた。
うなずくと、くっついて離れない司先輩を半ば抱き上げるようにして立たせた。
しかたなく手を離したその一瞬だけでも、司先輩は不安そうだった。
青史先輩にバレないように服のはしっこをつまんでいた。
そんなことしなくても青史先輩の腕は司先輩の肩に回されているのに。
その時だった。
なにかがものすごいスピードで突っ込んできた。
電光石火のごとく青史先輩と司先輩に掴みかかってきたのは美しい白銀の虎だと分かったのにそう時間はかからなかった。
驚いて声も出ない俺に、金色の瞳が俺を射抜いた。
青史先輩と司先輩は拍子をつかれてその場に倒れこんでいる。
どうやら体制的に青史先輩が庇うような形になったらしく脇腹を抱え込んだまま、立ち上がらない。
「先輩!!」
司先輩がなにが起こったか分からないという顔で呆然としていた。
虎はそのまま動かない青史先輩をゆらりとまわりこみ、咆哮を上げた。
虎の威嚇に全身のからだがこわばるのが分かった。
取り憑かれたみたいに目が、手が、足が動かなかった。
部長がゴクリとノドを鳴らした。
すると、虎がそれに反応して低いうなり声を上げた。
「ヒェッ!!」
たちまち部長の全身がガクガクとふるえる。
余裕のない心の中で俺も感じた。
なんて…なんて、殺気なんだろう。
この虎は吠えるだけで、俺ら全員を黙らせ、うごけなくさせた。
虎はまわりの様子をじっくりと観察してから、ふたたび青史先輩に襲いかかった。
ふりおろされる前足に俺は最悪の場面を想像してしまう。
だが、ふりおろされるはずだったそれは、次の瞬間ぴたりと止まった。
「やめなさい!!!」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
146 / 431