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届け。
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身を刺すような沈黙が続いた。
なぜ泣いている?
不安だから…?
なぜ怒っている?
心配、かけたから…?
混乱して、頭がうまくまわらない。
「…司。……また、逃げんの?」
低い、低い声だった。
はじけるように顔を上げる。
逃げる…逃げるって、何から? 誰から?
藤本、から…?
そういえば藤本がなにか言ってた気がする。
『アイツ、何モンだ?』
そうだ。たしか…
「いつになったら、心ひらいてくれんの?」
え?
ポロポロと泣きながら言った。
怒りと悲しみと苦しみと…いろんな表情がまじっているような顔をしていた。
心を、ひらく……青史に?
「そんな…俺、青史のこと…」
「俺、一生懸命司に尽くしたつもりなんだけど。
できるだけおまえに寄り添って、
おまえの弱いとことか、モロいとことか、
誰よりも知ってる自信あるし、
おまえが笑いかけてくれるならなんだっていいって思ってた」
握る手の力が増す。
「なのに…なのに…まだ俺に心を開かない?
俺、言ったよな?
おまえのこと、大好きだって。
おまえだって、俺のこと…ッ」
ガシッと腕を掴まれる。
抵抗できずにいると、そのまま縋るように抱きつかれた。
「なんで…なんで!!
俺をムシすんだよ!!!
付き合えとは言わねー。
好きになれとも言わねー。
でも…でも、俺がそういう意味でおまえのこと思ってることくらい、認めてくれよ……ッ!」
頭から冷水をぶっかけられたみたいだった。
…分かってた。
俺が、いつからか、誰も受け入れなくなっていたことに。
受け入れられなかったんじゃない。
俺が、自ら、拒んでいたのだ。
青史の想いを知りながらも、無意識に拒んでいる自分がいた。
青史だけじゃない。
まわりが、それで傷ついていたことも。
自分も、傷ついていたことにも。
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