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スキなんです。
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俺はそんな思いを断ち切るように軽く首を振ってそなえつきの受話器をとろうと手を伸ばした。
だが、受話器に触れる前に、誰かの腕が後ろから伸びてきた。
「長谷川さんからですよね?
俺がしときますから、先輩は別件をお願いします」
「凛太朗、そういうわけには…」
言い淀んだ口が止まる。
凛太朗の視線は『よけいな気はつかうな』と言っていたからだ。
久しぶりにみる凛太朗の怖い顔だった。
無言の圧力。
チラリと見える凛太朗の本性。
たぶん本来はこういう性格なのだろう。
優しくて、少し強引。
凛太朗は俺が固まっているのを見てとると、かすかに笑みを浮かべて俺の手からメモを引き抜いた。
あれ以来、凛太朗はこんなふうに俺に気を使ってくれることが多くなった。
藤本とどんなことがあろうと仕事は仕事。部長は部長だ。
イヤでも毎日一緒に話さなくちゃいけないし、仕事しなくちゃいけない。
相手はどう思っているのか分からないが、必要最低限のことしか話してこないのは救いでもあった。
俺もそこのところは割り切っているつもりだったが、凛太朗がそれをよしとしなかったのだろう。
カバーできるときはカバーしようとしてくれている。
そのことが俺の心を少し軽くさせてくれた。
そのとき、ふと視線を感じたように思えて振り返った。
……そんなわけ、ないよね?
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