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”ウラノ”
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俺は心も顔もグチャグチャになりながらも、今度こそ一瞬のスキを狙って
たまたま手元にあったマクラをウラノの顔めがけて投げつけた。
「ボフッ!」
みごと命中。
俺は急いでウラノの手からのがれ、ウラノをベッドから突き落とした。
「イタッ!」
「はぁ…はぁ…はぁ…」
俺は荒い息を吐き出しながらも、棚の引き出しにしがみついて殺虫剤を取り出し構える。
うん、カンペキ。
名付けて”ウラノ退治対策”だ。
前々から考えといてよかった。
「なにすん…え!? そこまでするの?」
なおも飄々とした調子を崩さないウラノが初めて驚きに目を開いた。
よし、成功。
心の底からのドヤ顔を向けると、ウラノの驚きの顔がゆっくりとゆがんでいった。
「そんなに…ッ! 僕のこと…キライ、なの?」
つたう涙がひんやりと冷たいフローリングを濡らした。
ウッと思わず喉をつまらしてから、あわてて首を振る。
「う、うるさい! どうせまたウソ泣きだろ!」
「そんなこと…ヒドイ! 僕、斗真クンのこと…なのにッ!
ベッドから落とすとか…このドエス! バカぁ! もう知らない!」
ひととおり俺をけなすと、ウラノはまた身体を丸めてさめざめと泣き始めた。
こぼれていく涙を拭くこともせず、ただただ時折ふるえるように身体を揺らしながら自分の腕を抱きしめている。
俺の中でグルグルと行き場のない罪悪感が理性とたたかう。
俺…ホントに、泣かした…?
でもウラノがその…やらしくさわる、から…
殺虫剤は、やり過ぎた?
でも、いつものウソ泣きかもしれない…
だけど…
内心困り果てて横たわるウラノの顔は長い前髪のせいでほとんど見えない。
俺は、性癖とかヒトに比べたら曲がってるし、また知らないうちにウラノを傷つけて…
そう思ってシュンとうなだれた瞬間だった。
耳に入ってきたのは何かを堪えるような声。
「…! だ、だまされないからな!!」
「………」
「さ、殺虫剤は…やり過ぎた、けど、もとはと言えばおまえが悪いんだからな!」
「………」
「何か言えよ、コラァ!!」
「………ッはははははは!!」
突然身体のふるえが大きくなったかと思えば、ウラノは耐えかねたように笑い出した。
「アアッ! クソッ!!
やっぱウソ泣きじゃねーか!」
「ハッハハハハ! だってッ! だって!
おもしろいくらい…ャハハははははは!!」
笑い転げるウラノに俺は真っ赤になりながらももう一度マクラを手に取り、バコバコとウラノに叩きつけた。
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